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暖めれば解れます。
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〈翔ちゃん〉
俺の1番古い記憶には、いつもアイツの面影がある。
家族の事よりも、無邪気に笑うアイツの情景が浮かぶ。
〈そんなに怒らないでよ〉
〈僕、ずっと前から翔ちゃんに片思いしてたんだ〉
〈我慢できなかった〉
アイツは、お互い同意でやったと虚言を吐いた。
俺が覚えてないからって、調子に乗りやがって。
「…翔ちゃん」
「はぁっ…!」
ガバッ
勢いよく起き上がると、頭がズキズキと痛んだ。
頭を抑えると、知らぬ間に額に貼られた冷えピタに気が付いた。
「大丈夫?!寝てなきゃダメ!」
「なんで俺…てかお前…」
確か、昨日はいつも通り仕事してた筈だ。
店に残って片付けしてて…。
「翔ちゃん、昨日仕事終わった途端倒れちゃったんだよ。僕が居たからここまで連れて来れたけど。無理しちゃ駄目だよ…」
コイツは心配そうな顔でじっと見てきた。
そういえば最近無理をしていたかもしれない。
「これ、うどん。作ったけど食べる?」
コイツは、出来立てのうどんを見せるようにヒョイと持ち上げた。
美味しそうな匂いが立ち込めて、食欲が湧いてきそうだ。
いやいや…待て待て。
「てか、勝手に家に上がんなっていつも言ってんだろ…」
エプロンまでつけて。
ここにいて当然、とういう態度だ。
「だって合鍵貰ったんだもん。使わなきゃ損だよ」
「いや、お前のは勝手に作ったんだろうが…。まぁいい、食べたいから早く寄越せよ」
食べ物に罪は無い。
それに、憎たらしいがコイツの作る料理は悪くない。
「え!食べたい?ちょっとだけ待っててね〜ふーっ、ふーっ、ふーっ」
ニヤケ顔でふーふーしてるから尚気持ち悪い。
「おい、自分で食べるから止めろ」
「はい、アーーン」
箸で取ったうどんは、呑気そうに湯気を立てていた。
満面の笑みでうどんを食べさせようとするコイツが恥ずかしかった。
「…ぃ、止めろ!」
ガシャン…!
俺の振り下ろした手がお椀に直撃し、熱いうどんの汁が顔に跳ねた。
「あつっ……」
「翔ちゃん…!!ごめんね、今冷やしたタオル持ってくるから」
どう考えても、腕に汁が掛かったアイツの方が重症だ。そんな事も気に留めず、部屋を出て行った。
俺ももう少し優しくした方が良いって分かってるけど、
アイツのことが許せない気持ちも存在していた。
「絆されちゃ駄目だ…」
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