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虎と兎
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もうすぐでクリスマスの時期が近くなり、彼方此方でカップルが多くなってきた頃、
俺はいつも通り、カフェ店員をしていた。
独り身は寂しいけど、受け入れれば強くなれる。
俺はそんな事を思いながら、テーブルを拭いていた。
「あれ?今日はあの人来てないですね」
「あ〜、出張だって」
柏原さんはここのバイト、始めて少ししか経っていないからだろうか。
アイツがいないのをとても珍しがっていた。
「どこに行かれるんですか?」
「確か、インドだったかなぁ…」
「え、海外?!あの人何の仕事してるんですか?」
柏原さんが目を輝かせている。
やめろ。そんなキラキラした目で俺を見るな。
「お、俺は何も知らん。」
「嘘だ!あんなに仲良いくせに。」
カランカラン…
「ほらお客さんだ…!」
「ちぇっ…」
コソッと舌打ちするな。
「「いらっしゃいませ。」」
いいタイミングだ。
と心で呟きながら、俺は入店した客に目を引かれていた。
どんな客が来ても、変な意識はしたことがない。
けれど、しょうがないだろう。
透き通った白い肌。
背はあまり高く無いが、それよりも顔に目が行く。
人形の様な顔立ちと、痛んだ赤い髪。
その青年は俺を見た途端、美少年から不良少年へと変わった。
形の良い唇を歪ませ、眉間に皺を寄せると、
ズカズカとこちらの方へ…。
えっ、なになに。怖いんだけど…!!
俺は虎に睨まれた兎のように、
小走りでカウンターへと逃げた。
しかし兎は捕らえられてしまった。
カウンターに乗り出した虎は、俺を全力で睨みつける。
綺麗な顔立ちが、より怖さを引き立てていた。
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