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誕生日忘却
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珍しく、櫻井さんが店に来ない某日のことだった。
「翔ちゃん、明日何時からがいい?」
「は?」
カウンターで頬杖をついて、コイツはニコニコと笑みを浮かべていた。
突拍子の無い質問に、唖然とする。
確かに、明日は定休日だけど…。
「何の話だ」
「誕生日パーティー」
「誰の」
「翔ちゃんの」
完全に忘れていた。
自分の誕生日など、寂しい独り身にはただの平日という意味しか成さない。
でも、店長はこの時期になると、俺の好きなコーヒー豆をプレゼントに贈ってくれていたことを思い出した。
そうか、あれは誕生日プレゼントだったのか。
「お前に祝われたくない」
「そんな〜、色々準備したのに…」
コイツはカウンターの上にだらしなく突っ伏した。
聞き耳を立てたのか、柏原さんとタクミが一緒になって俺の元へ駆け寄ってきた。
焦りと驚きの表情をしている。
「明日誕生日なら言ってください!知りませんでした!」
「そっすよ…。何も用意してねぇ」
…そんなに落ち込まなくて良いのに。
本人すら忘れていることだ。
それに、今年誕生日を迎えたら25歳になる。
祝われても、正直嬉しくない。
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