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中学一年生
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「仲原〜、部活何に決めた?」
「いや、僕は入らないかな」
「えっ、マジで…?てっきりサッカー部でも入ると思ってた。運動ばり得意じゃん」
「あはは…、親が許してくれなくて」
入学式から1ヶ月経つ頃には、教室内ではグループも分かれてきた。
生徒達は新しいクラスの事や部活の話で盛り上がっている。
一方で、僕は二週間後に控える定期テストの心配をしていた。
学年5位以内に入らないと、母親に叱られてしまうから。
「仲原ってイケメンでスポーツも出来るのに、勉強も頑張るとか…次元が違いすぎる」
「親戚の人から聞いたんだけど、お父さんがお医者さんなんだって」
「金持ちじゃん。凄いよね」
わざと大きく話しているのか、自分の噂話がよく耳に入る。
最初は気にしていなかったが、最近は耳の周りに飛ぶ蠅のように付きまとっていた。
僕は変わらず無視をしていたけど、本当は直接言いたかった。
「勉強も運動も、努力をすることは僕にとっては義務だ!!
この顔も親譲りだし、凄いのは医者である父だ。いちいち僕の話をするな!!放っておいてくれ……!!」
放課後、人気の無い屋上で1人で愚痴を零す。
家でも教室でもストレスが溜まる僕にとって、最高の発散方法だった。
帰宅する前に、数十分で終わらせる儀式だ。
「……噂話だって、僕を賞賛する声ばかりなのに、どうしてこんなに嫌気が差すんだ」
「それは、単に自意識過剰なだけだろ」
人が居ないと決めつけ、油断していた。
立ち入り禁止の屋上の扉が壊れているなんて、僕しか知らないと思っていたのに。
声の主がどこにいるか見つけるため、屋上を必死で見渡した。
「…っ、誰ですか?」
さっきまでの愚痴が、全て聞かれてしまっていた。
口止めをしなければいけないと思った。
「上だよ」
その声と共に、地面に着地したような音が聞こえた。
その方向を振り向くと、意外な人物が立っていた。
「君は…」
不揃いな黒髪が、吹かれた風になびいた。
いつも下を向いて、正面の顔を見たことが無かったから驚いた。
思ったよりも、綺麗な顔をしていた。
「…多田くん」
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