アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
内と外
-
朱屋町の芸者が年齢に問わず通う朱屋町稽古場では、舞、横笛、三味線、華道、茶道、書道、琴、太鼓、長唄、などを習うことができる。
立方の芸者にとって舞は必須科目で全員が習うことになっている。
ちなみに金扇屋の陰間は舞、三味線、長唄が必須で、それに加えて2つまで習い事をすることができる。俺に関しては一通り習わされ毎日が稽古漬けだったが、それは3歳から始めたからできただけのことである。
関係者以外立ち入り禁止のその建物に入り、すれ違うベテラン芸者さん一人一人に立ち止まりお辞儀をする。
ようやっとたどり着いた稽古場にお師匠さんはまだ来ておらずホッと息をついた。
正座をして待っていると、舞の師匠である谿安先生がやってきた。70を越えたお爺さんであるが、その舞の腕前は逸品である。
「おはようございます」
「おはよう……柊、舞は毎日やってるか」
「はい、やっております」
「ん、じゃあまず曲目の1番から……」
会って数分だというのに、稽古はすぐにスタートする。しかし、この人の前では緊張しない。なにせ、谿安先生に師事して、もう14年になる。
鶫達がくるまでの1時間、1割は褒められ9割は直され続けた。
扇子で膝やら肩やらを叩かれ矯正されて、何度も「違う!」と怒鳴られる。額から伝った汗は幾度となく顎から滴り、着物を随分濡らした。
「「「ありがとうございました」」」
10時から練習に加わった兄弟達と共に挨拶をして、午前の稽古が終わった。
一番離れたところにいた鶫がやってきた。
「柊兄様! 帰りましょ!」
「わかったわかった」
教科書やタオルを手提げにしまう時間すら惜しいというふうに、鶫は急かした。そんな鶫が可愛らしい。
「柊兄様、今日の舞もとても美しかったです」
唐突に聞こえた凛とした声は花鶏のものだった。
真面目そうな(実際真面目だが)表情で、しゃがんでいるこちらを見下ろしている。
「ありがとう」
「ぜひ、お時間があれば教えて頂きたいのですが……」
「うーんと、明後日の午後は暇だよ。でも、それだと花鶏が大変かな」
「いえ! 大丈夫です! では、明後日の午後によろしくお願いします」
綺麗なお辞儀をして、花鶏は出口で待っていた鶴と共に去っていった。
「花鶏兄様、かっこいいなぁ……。それに、とっても優しいんですよ!」
鶫はまるで自分のことのように自慢した。
花鶏は俺の2個下で15歳の少年だ。その割に落ち着きがあって冷静沈着。彼も他に負けず努力家である。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
72 / 569