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後ろ向きと君の覚悟
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部屋に戻ると、京は平然とした様子でソファに座っていた。俺を認めると立ち上がり、「寝室に入ろう」と言ってくる。
「変な意味じゃないよ。俺も処理したし、綴もしてきたんだろ?」
あっけらかんと言われるが、実のところする前に萎えてしまった、などとは到底言えない。
曖昧に頷き、俺と京は鞄を持って寝室へと入った。
寝室もまた空調が効いていて涼しかった。寝室は先ほどのリビングよりは小さいが、それでも俺の部屋よりは大きい。
男子2人が横になっても狭くないベッドに、勉強机、本棚、クローゼット。小さな箪笥の上には季節の花が生けられて美しく咲き誇っている。
「外は暑いし、することも無いし、何しようか」
京は窓の外を眺めながら呟いた。
「あ、俺勉強教えてもらいたい。夏休みの課題やろうよ」
「勉強か……。残すのも面倒だしやっちゃうか」
京は同意するとすぐにローテーブルを出してきてそれを組み立てた。クッションを二つ出し、俺にも渡してくれる。
まだ若干先ほどのことで気落ちしているが、京の前でくよくよしているわけにはいかない。計算式でも見ていれば気は紛れるだろう。
腰を下ろし、鞄の中から課題を取り出す。膨大な量のそれは見るだけでため息が出た。
「綴は昔から勉強嫌いだよな」
その様子を見ていた京が苦笑した。
「嫌いだよ。全然楽しくないもん。強いて言えば国語と日本史が好きだけど、他は全く」
勉強は苦手だ。京と一緒に猛勉強したから秀明学園に合格できたし、その時の基礎学力のおかげでどうにか今まで留年せずにやっているが、もともと自分の勉強に対する理解力は低い気がする。
比べて京はなんでもそつなくこなしてしまう天才型だ。苦手科目は国語のみだが、それでさえ苦手と言いつつ俺と同じくらいの点数を毎度取っているので、俺の立場などあったものじゃない。
「流石、金扇の息子だけあって日本的な科目だな」
「確かにね。したら、英語と数学が得意な京も五十山らしいのかも」
他愛もない話をしながらノートを広げ、問題の指定されたところを解いていく。俺の手が止まると京は少し見守り、そしてから「ここはこの公式を使って……」などと教えてくれた。
京は教え上手だ。わかりやすくて、的確で。
教科書と照らし合わせてくれるから顔が近くによると、その真剣な表情にドキッとした。
もし秀明学園が男子校でなかったら、これは確実にモテていたと思う。
あ、今でもたまにラブレターもらってたっけ。
その事実を勝手に思い出し勝手に不快な気分になりつつも、俺は京の話に耳を傾けた。
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