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星(あかり)、俺、気持ち
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……朝食の場でする話にしては重すぎだろ、パパ……
パパの意向で星(あかり)のママが呼び寄せられて遅めの朝食になったリビングは、テーブルの椅子が1つ足りなかった。
俺と星(あかり)はソファーに座ることにした。用意してたサラダとベーコン、ポテトとスクランブルエッグはトーストに挟んでサンドイッチになった。もちろん星(あかり)のママの分も作った。
コーンスープとホットミルクだけは冷めちゃったから全員分、温め直した。星(あかり)と俺の分はソファー横のミニテーブル。狭そうだった。
全員が揃ったところで、パパが手短に話をした。
昨夜、俺が部屋を抜けたあと、パパから旭さんに話されたことがそこで全て明かされた。
話の内容があまりにショックで…、だけどママの、……ママが死ぬ間際、双子を犠牲にしたことを悔やんでいたような気がした。
ほんの少し……、本当に少しだけだけど、ママを許せるかもしれない……
……でも、許せないかもしれない……
パパの話(ママの症状と亡くなる前の話だ……)と食事が終わった。
重い話だった。
俺らはまだ空になった食器を前に、何となく話すのをためらっていた。
パパが、もう少し、今度は昨日の出来事とか話したいと言うのでみんなで聞いた。
昨日の出来事っていうのは、つまりこういうことだった。
昨日、会社で、吸血鬼と吸血される相手との愛の深さが血の味に夥しい影響を与えることがハッキリしたのだという。
吸血鬼が人の血を吸うとき、お互いに愛し合っているとものすごく美味しく感じる。
他人だと全く美味しくない(むしろマズい)し、どんなに熱烈に思っていても片思いだとそれもダメ。
何だそれ……、ふざけてんのか。
だけどそうすると、ママは、…パパとママはやっぱり愛し合ってた……ってことだ…。
いやにロマンチックだけど多分に胡散臭い。
だって都合よすぎ。後付けくさいだろ。俺が昨夜怒ったからそういう話にしたんじゃないの?パパ……
……と思ったけど隣に座る星(あかり)は神妙な顔をしていた。
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パパは昨日、深夜23時頃に会社から帰って来て、リビングで眠っている星(あかり)を発見した。
いつもなら俺の部屋に泊まり、俺と一緒に星(あかり)は眠る…。
それなのに一人でリビングに寝ていたのが、パパには腑に落ちなかった。俺と喧嘩でもしたのかなと最初は思ったらしい。
しかもテーブルの上には少し水が入ったグラスが1つ、薬が二種類置いてあった。…眠剤だとピンときた。服用したのが星(あかり)なのも。
いったい、何があったんだ…
そう不審に思いながら二階に行くと、部屋の中から旭さんと俺との会話が聞こえ、俺が星(あかり)の病気のことを前々から薄々気付いていた…って分かったみたい。
そのあと3人で応接室で話し、俺が応接室の部屋を飛び出して星(あかり)が寝ている部屋に駆け込んだのを見送ったところまでで話を切ると、パパは後ろを振り向いた。そしてソファーに座る俺と星(あかり)、2人に声を掛けた。
「……で?昨夜……あの後2人で何をした?」
「…え!?…やだ!?まさか…!?」
「…アズキ…!そういうのは、ちょっと…」
多分真っ赤になってる星(あかり)のママと旭さんを制してパパは続けた。
「教えて。……これはただごとじゃないんだ。
星(あかり)が発症した以上、親の僕らにも責任がある」
パパの真剣な顔、……これまであまり見たことがないような表情。
え、そんな顔も出来るの?パパ?……おどろいた…
だけどそれは旭さんもそうで、顔色を伺うと何となく口もとに手をやって目を泳がせてる。
「………」
「…………」
星(あかり)と、顔を見合わせた。
俺は観念して口を開いた、……そのとき
「…あ、…あっくんは、…その、は、反抗期で……俺が……、俺のせいで…」
意を決したように星(あかり)が言った。
すると旭さんがそれをさえぎるように立ち上がり、
「ちょっと待って」
そう言って俺と星(あかり)が座っているソファーに向かって来た。
星(あかり)のママもつられたように立ち上がり、こっちに来た。
そしてパパが揃ったところで旭さんが口を開いた。
「僕は。僕はみんなに一番謝らなきゃいけない人間なんだよ…
まず綾ちゃん…本当にごめん…
それに星(あかり)………許してもらえるとは思ってない。
ものすごく大きな荷物を生まれた時から背負わせて……自分だけのうのうと免れて……
どう、償っていったらいいのか……
それからあっくん……。
星(あかり)がごめんね……
…本当にすまないことをしてしまった…」
綾さん、…星(あかり)のママが震えてる旭さんの肩にそっと手を触れた。
中年男性なのにピンクが好きな旭さんは今日もやっぱりピンクの半袖を着てる。
その半袖の端をそっと押さえるみたいに触れている綾さんの指先も、やっぱり微かに震えてた。
パパがその後を引き取るように話を続けた。
「……僕らはウィルスに立ち向かわなきゃならない。
星(あかり)はストレスを極力押さえる生活をすること。
僕と旭はそれぞれの立場から、今までより以上にウィルス根絶の方途を探っていくこと。
なるべく早く、薬を開発するためにね。
綾ちゃんは…今まで通り、僕が検体が必要な時は協力して欲しい。
頻度は増えるかもしれないが…」
このとき綾さんがしっかりパパの目を見て頷いたことに星(あかり)は驚きの目を向けていた。
俺もそれは同じだった。
「え、今までどおり、って、じゃあ今までも、綾さんはずっと検体を供与してたってこと?」
俺が尋ねると綾さんはうん、と言って
「感染してるのはわたしもだからね…
星(あかり)はわたしを通して感染したんだし、……断る理由はないから…」
…マジか…
知らなかったのは俺と星(あかり)だけだったんだ……
…なんか、頭痛くなって来た…
俺は立ち上がってリビングのテレビの横に設えられた引き出しを開け、中から市販のバファリンを取り出した。
2錠開けてキッチンに行き、グラスに水を注いで2杯で胃に流し込んだ。
いつの間にか背後に星(あかり)がいて、
「…大丈夫?」
不安そうに声をかけるから少し笑って
「大丈夫。すぐ治(おさま)るよ…」
と言うと星(あかり)は手を出してきた。
繋ごうってことだ。
手を握り返すと冷んやりしてた。星(あかり)は体温が低めだ。それも吸血鬼だからなんだろう。
ソファーに戻るとパパが話を続けた。
「それと梓」
「うん…」
「梓は、星(あかり)が好き?」
「………っ」
俺が言うか言うまいか迷っていると星(あかり)のママが言ってきた。
「あっくんはともかく、星(あかり)があっくんを好きなのは、もうバレバレだけど」
「えっ!?」
そうでしょ?と言う綾さんに、星(あかり)が真っ赤になってた、それで明後日の方向を見ていた…。
俺は明言しなかった。
だって!星(あかり)本人にさえちゃんと面と向かって伝えてないんだよ?
なんで両家揃ったところで公開処刑されなきゃいけないんだ…。
だけど星(あかり)が俺のことを好きなのは、これでその場のみんなに暴露されたみたいで……
星(あかり)……本当に俺のこと好きなの…?
確かめたい。
早く、2人になりたい。
パパと旭さんと綾さんがいないところでもう一度、ちゃんと聞きたい。星(あかり)の口からハッキリ聞きたかった。
パパは、言いたくないなら言わなくていいと言ったけど、その代わりとんでもないことを言ってきた。
「梓、僕は好きでもない子を抱く男に育てた覚えはないからね…?」
………バレてる……
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(続く)
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