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ツーマンセル
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「アカネ、おはよ」
その声に振り返ると牡丹色の髪の青年がいた。
「おはようございます」
当たり障りない挨拶を返した。
彼と話すのはこれでまだ二度目だが、少し馴れ馴れしいのではないか。
まぁ、業務に支障をきたさないのであれば問題はないけれど。
「今日からだね、キミが相方でよかったよ」
相方、と言うのは、今日から実施されるツーマンセル制のことだ。
自分は、牡丹色の髪の青年、ナンバーと今日から二人一組で刑務所での仕事を行うこととなった。
「どうしてですか」
「んー…ここ変な看守多いでしょ?キミは普通そうだし」
言われてみれば確かに、爆弾魔やナルシスト、多重人格者など、よく言えば個性の強い看守が多い。
とはいえ、自分も普通だとは思えないが。
「そうですか…」
「いろいろ迷惑かけると思うけど、よろしくね」
「はい、看守長から話は聞いてます、囚人達にはバレないようにフォローしますね」
迷惑、とは、彼の目が見えないことを言っているのだろう。
彼が盲目であるということが囚人達に悟られてしまうと弱みを握られてしまうことにもなるので、絶対にバレないように業務を行ってくれとの看守長からの命令があった。
ツーマンセル制というのも彼のために実施された制度なのではないかと、自分は思っている。
新たな制度を作ってまで彼をこの刑務所で使いたい理由はおそらく、彼の人間離れした視覚以外の感覚だろう。
彼は目が見えない代わりに、聴覚、触覚、嗅覚、味覚が異常に鋭いらしい。
見えていなくても、その4感を使って周囲の人間の正確な位置が把握出来たり、距離が離れていても小声で話している内容が聞き取れたり、匂いで飲食物に毒が盛られていることを察知できたりすると聞いた。
こんな貴重な人材はそういないだろう。
そんなことを考えてる間に、始業時間だ。
「じゃあ、そろそろいこっか」
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