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不安
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泥棒猫……ではなく、侵入者、名前は猫太と名乗っていた。
彼を緊急用の牢屋に連れていき、その日の仕事は終わった。
ナンバーはこちらに向き直り、なんともない顔で「帰ろうか」と言う。
自分は「はい」と頷くだけ。
それからはお互いに無言だった。
無言が続くほど、怖くなった。
いつかの、彼ではない彼を思い出して、胸がざわつく。
それぞれのベッドに入ったあとだったが、たぶんまだ寝てはいないだろう。
何か言わなければまたあの日のように彼が乗っ取られてしまうような気がして、とにかく何か話さなければいけないと思った。
「あの、ハグ、しなくて大丈夫ですか…」
あとから考えるとこの提案は意味不明でしかなかった。
もう少し気の利いた言葉は思いつかなかったのだろうか。
「え?」
彼は驚いている。当たり前だ。
「ストレス、ためてませんか…?」
「…ハグ、してもいいの?」
失言だったような気がしたが、別に嫌という訳では無い。
「………はい」
彼はすぐにベッドから出て、迷いもなく自分のベッドに入って抱きついてきた。
暖かい。
抱きつかれてから気がついたが、自分の体はだいぶ震えていたようだ。
あの時と同じ、緊張と安心が混ざる違和感。
だんだんと身体が温められると、安心の方が勝り、すぐに眠りに落ちてしまった。
目が覚めると、まだ暗かった。
時計の針は午前3時を指していた。
自分は彼に抱きしめられたまま眠りに落ちたはずだが、彼はそこにはいなかった。
自分のベッドに戻ったのだろうか。
彼のベッドの方を見る、明らかに布団の中に人がいる様子はない。
彼の名を声に出して何度か呼んでみても反応はない。近くにいる様子はない。
いない。
まさかまた……
額から流れる汗を拭いながら部屋を出た。
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