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食事
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その日の夜、まさか本当に食事に行くとは思わなかった。とても良いレストラン。まさか二人が僕の入学を祝ってくれるなんて、と思うだけ無駄だった。だって、二人は兄さんには「久しぶり」とか声をかけるのに、僕には素っ気ない態度。
分かってたよ。二人は兄さんに会いたかっただけ。
初めは喧嘩しないようにって理由だったと思う。兄さんと向かい合うように座ると、僕だけ異質に感じられた。母さんも父さんも体ごと兄の方を向いて話す。僕はニコニコしてお行儀よく座るだけ。その口を開くのは料理が来てからだ。
デザートも終わり、カフェ・ブティフールが並ぶ頃、兄さんは立ち上がって僕の横にしゃがみこむと、何かが入った袋をくれた。
「入学おめでとう」
中に入っていたのは、シャープペンシルとボールペンのセットだった。とても落ち着いたデザインで、高校生が持つには少し高価な気がするけれど、兄さんの好意が素直に嬉しかった。
両親は面白くなさそうに、作り笑いを浮かべ、「良かったじゃないか」とか、「大事にするのよ」なんて思ってないことを言う。
その後、両親と兄さんの談笑をひとしきり眺めたあと、部屋に帰って来た。母さんはどんなところに住んでいるのか見てみたいとせがんだが、兄さんが「もう今日は遅いから」というと、文句を言いつつも引き下がった。
大きなため息を吐いて、兄さんはソファの上に深く沈む。僕はさっさとお風呂のスイッチを入れて、夕方まで中身を片付けたダンボールを丁寧に縛った。
「なぁ、もう一つプレゼントがあるんだ」
思っても見なかった言葉に兄さんの方をむけば、兄さんは悪戯っ子のような笑みを浮かべて、僕の前に座り込んだ。
「でも、それは届いてからのお楽しみ」
歯を見せて笑うその顔はどこか悲しそうに見えて、僕はその真意を掴みきれなかった。
「ねぇ、兄さん……」
風呂上がりに、テレビを見て楽しそうにしてる兄さんに話しかければ、「ん?」と顔だけこちらに向ける。
「久しぶりに、一緒に寝たいな」
笑顔で言えば、兄さんは飲んでいた水を噴き出した。
「ダメ?」
兄さんが断れないことをわかっていて首をかしげる。
「ダメじゃないけど……ベッド狭いだろ」
「大丈夫だよ、僕も兄さんも細いから」
だから、良いでしょ?なんだか、そんな気分なんだから。なんでかって言われたらわからないけどそうなんだ。人肌が恋しいって言うのかな?分からないけど、温もりを感じたい。
俯きがちになる僕を見て、兄さんは「仕方ないな」と了承してくれた。
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