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ベッドサイドに取り付けられた照明調節をいじり、わずかな明かりに灯される佐々木の顔を見上げた。
こいつはまだ、高校生のはずで、10代のはずで
なのにどうして、こんな…慣れたような手つきで。
素直に悔しいと思った。
俺よりも出来の良い部下に思ったそれとは違う
全く種類の異なる嫉妬だ。
俺が妬いているのは、佐々木本人ではなく
彼が他に抱いたかもしれない知らない誰かで。
佐々木が好きな、誰かで。
どうしてあんな残酷な事を言ったんだろう。
俺に、好きになれなんて。
自分は他に想い人がいるにも関わらず、酷い奴だな。
どこまで俺を弄べば気が済むのだろう。
代わり?
代わりになれるのか?
俺みたいな、佐々木からしたらおっさんの部類に入るような男で。
どんなに俺がお前に想いを寄せたところで
そこに意味なんか無いのに。
暖色の光が照らす部屋。
何処からか聴こえる知らない曲。
すぐ上で袖から手を抜くのは、俺の心臓を鷲掴みにする君。
そんな出来上がった環境の中で、俺は──。
「…竹内さん?何泣いてんの。
あぁ……怖くなった?」
「こわ…っ、ぁいよ……おま、ッんなんだよぉ…。」
俺はこんなにも、お前で頭がいっぱいなのに
こんなにも、お前の傍に居られることが嬉しいのに。
俺ばかりお前で埋め尽くされて、でもお前はそうじゃなくて
嬉しいはずなのに、全然安心しなくて、むしろその逆で。
好きになれって何だよ
好きなんだよ。
とっくに、気づいた時にはもう…遅かった。
この気持ちを言わせてくれないのはお前のせいじゃないか。
そんなに俺で遊びたいのか。大人を舐めるなよ、俺がいつお前の恨みを買うような事をしたというんだ。どれだけ傷つけさせたいんだよ。
俺は…
俺だって……ッ、お前に
「好きに、なって……っほし…ぃ。」
この世の普通なんて知らない。
俺が普通じゃないなんて知らない。
怖いに決まってる。
だけどそれ以上に、お前を好きだと自覚してしまったから
この心はもう、止まり方を忘れてしまった。
無意識に佐々木へと伸びていた手が、俺よりも熱くて大きな指に絡む。
指同士の間に、佐々木の体温が馴染んで
強く、痛いほどに握り返された。
「……ねえ、竹内さん。それ本気で言ってんの?」
「……悪い、かよ…っ。」
悪い、だろうな。当然だ。
口にしてから真っ暗の波が押し寄せる。
だって、佐々木は別の誰かが好きで
俺を好きになる事なんてありえないから。
そう、思っていたのに。
佐々木の目は何処か熱を帯び、心なしか潤んでいるようにも思えた。
眉間に深くしわを寄せ、その表情が一体何を現しているのか
俺にはよくわからない。
「一応言っとくとさ、さっきもずっとずっと独り言いってたからな。俺の良いように解釈するからな。
竹内さん“も”俺の事好きって…そう思うからな。」
「……ぇ、?」
すり抜けた指先が、佐々木の熱を失ったと気付くよりも先に
がばりと勢いよく伸し掛かるのは、俺よりずっと背の高い、俺をすべて覆ってしまう佐々木の身体だった。
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