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*193.
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とても大人の男のする事とは思えない、緊張に震えた下手くそなキス。リードするのが高校生だなんて、情けないにも程がある。
音を立てるような煽情的なそれではない。だがこれまでの色々と飛び越えてきてしまった情事の中で、一番温かくて満たされた気がした。
直接的な満足感ではなく、じんわりと凍った心が溶かされていくかのような心地良さ。
罪悪感が無いと言えば嘘になるが、今は…今だけは、この温度を手放したくない。
「暁人さん、ぎゅーは?」
「んぁ…?」
離された唇が切なくて、夢中で背中に手を回す。胸同士が重なれば、俺と佐々木の鼓動が混じって一つになっていく不思議な感覚に包まれた。
あ…佐々木も、速い。
ドキドキしてくれているんだ。俺と同じように、こいつも。
嬉しすぎて、今なら何だって出来る気がする。空くらい簡単に飛んでみせよう。
「もう一回しよ?」
「…ん。」
2度目のキスは、さっきよりずっと距離が近い。するすると厭らしい手つきで俺の手の甲を撫でると、佐々木は容易く指の隙間に自分の指を通す。
少しも違和感がないのだから大したものだ。やっぱり年齢詐称でもしてるんじゃないか、なんて。
「…、ぁむっん?!?」
その時、唇に触れていた感触がぬるりと湿った何かに変わった。やっぱり何だって出来る気がするとか嘘だ。無しだ。これは想定外だ!
思わず肩を押して身体を離すと、目をまん丸にしてきょとんと首を傾げる佐々木。
「きゅ、急に何すん…っ。」
「舌入れられるの、もしかして嫌い?」
…俺が高校生の時ってどんなだったか。
少なくとも、好きな相手とする1度目や2度目のキスじゃ迷わず舌を入れ込むなんて無理だった。
この男、さては相当なタラシ野郎だったな。
「…嫌とかそういうんじゃ、無いが、その……。」
「え?じゃあしようよ。……ダメ?」
その上目遣いの“ダメ?”ってのはどうにかならないもんか。俺よりデカい図体をしておきながら、急に可愛らしさをチラつかせるのは卑怯でしかないぞ。
嫌なんかじゃない。そりゃ本当は、煙草臭いだろうしもしかしたら昼に食ったオムライスのにおいが残っていて“あ、オムライス食ったんだな〜”とか思われるのは嫌だけど。歯を磨いてからが理想ではあったが。
でも、そうじゃないだろ。
むしろお前は違うのか?こんな感情に飲み込まれているのは俺だけなのか?
「ダメじゃ、無いけど…こ、心の準備を……せてくれなきゃ…、恥ずかし……だろ…。」
なんでお前は、そんなに堂々としていられるんだ。
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