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ちゃらお君のお気に入り
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恭弥が風呂からあがると静が「俺も入ってくる」と言ってスっと恭弥の横を通り過ぎた。
(いつもなら頭撫でるのに…)
手の届く距離にいれば当然のように触れ合っていた静が遠くなった気がして、恭弥の心に先程振り払ったはずの悲しい気持ちがまたじわりと広がった。
暫くの間、タオルを肩にかけたままぽたぽたと滴る水滴も気にせずソファに膝を抱えて座っていた。
「恭弥、髪乾かさないと風邪ひくよっていつも言ってるでしょ」
「………拭いて」
顔を埋めたまま聞こえるか聞こえないかギリギリの音量で呟くと静は何も言わずに恭弥に近づいていき隣に座った。
ぐいと自身に背を向けるように恭弥を座り直させると肩に掛かっていたタオルを取って頭に被せて拭いてやる。
「…………」
「…………」
2人ともが黙り込み沈黙が続いたが先に口を開いたのはやはり静だった。
「恭弥はどうしたい?」
「……どうって?」
「まずはお互いのことを知らないとでしょ?」
「う、ん」
「先生と生徒だし変な感じだけど、友達から始めてみる?」
「………」
沈黙、と言うよりは恭弥は言葉を失っていた。
(友達?トモダチ?ともだち?)
友達ってなんだっけ?セフレ?いやいや静がそんな意味で今使うはずがない…脳内で疑問を解決しようと必死になるが恭弥の頭ではおかしな方へ行ってしまう。
「友達って、何するの…」
「え?あー…どっか出掛けたり、ご飯食べたり、話したり…?」
予想していなかった質問に自分で言っておいて語尾が疑問形になる静。
(イマドキの高校生って友達同士で何するんだ?健全な遊び…つってもこいつは健全じゃなかったか?)
自分の想い人に対して余りに酷い考えだがその辺は2人ともがルーズで今更である。
「…………か…………かは?」
ぼそぼそと小声で何かを恭弥は呟いたが静は聞き取れなかった。
「なんて?もう1回言って?」
「だからッ!その…き、すとか……はぐ、とか…」
今度は静が絶句した。
(それは俺が聞きたいわ…てか首まで赤い…)
恥ずかしかったのか、俯いて顕になっている項がりんごのように赤くなっていた。
そこに我慢の出来なかった静が唇を寄せる。
「!?」
ふにっという柔らかい感触に飛び上がるように驚いた恭弥が首より赤い顔でばっと振り返った。
わなわなと震える口元、羞恥に染まった頬、見開かれたぱっちりとした目。そんな顔をみて静はハッとする。
(あ、れ…なんでこんなグズグズしてんだ?覚悟しとけとか、逃がさないとか言っておいて…)
俺らしくないだろと思う。だがそれだけ、それ程までに恭弥を手放すことにならないように必死な自分を思い知って笑いが込み上げてくる。
(情けねぇ…優柔不断でかっこ悪ぃ…)
こんな姿は見られたくないと静は恭弥をソファに押し倒すとその目元を片手で覆った。恭弥は抵抗もしなければこんな状況でも僅かも怯えなかった。
「やめた」
「…せい?」
「お互いを知るとか、友達とか、時間の無駄だ。そんな事したって何も変わんねぇよな」
「ぇ……」
押し倒されようとも視界を奪われようとも平気だった恭弥がびくりと震え、顔を強ばらせた。
(俺のことは怖くないけど、俺の言葉は怖いんだな)
静はせいになら何をされてもいいという恭弥の言葉を今更理解した。
「恭弥は俺のこと好きだよな?」
NOとは言わせないという迫力すら感じる質問に恭弥は震える唇で一瞬の躊躇いもなく答える。
「すき」
「うん、俺も」
「っ!!……手、手退けて!!お願いせい!!」
暴れて振り払うことも出来るだろうに恭弥はそうしない。手を伸ばして静の顔を探して強請る。
「きょーや、せいじゃないでしょ?」
「あ……し…しず、か…静、お願い!」
「うん、そう。いい子」
そう言うと静が恭弥の目元から手を離した。暗かった視界が急に明るくなって眩しい。
(はやく、はやく)
早く明るさに慣れろと思うのに、しょぼしょぼと細めてしまう目が焦れったい。
そんな恭弥を見て静は覆い被さるような体勢になると恭弥の前髪をかきあげる。
「そんなに好き?」
自身の上に影が落ちて恭弥はやっとしっかりと目を開けられるようになった。視界に映った見慣れた顔はいつ見ても綺麗でかっこいい。
「好き」
だけど、と恭弥は思う。手を伸ばす。
「コレが1番好き」
両手で包み込むように静の顳顬から手を差し入れて引き寄せる。溶けてしまいそうなほどに甘い色をした恭弥のお気に入り。その中に映っている自分が子どもみたいに笑っていて、恭弥は何だか変な気分になった。
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