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だけど、もうそれには屈しない。
「……ねぇ」
僕を攻撃した男子に首を少し傾け、口角を少し上げる。
「僕の席、ここで合ってる?」
窓際から二列目、後から三番目の机に人差し指をつく。
一気に教室内はシン……、と静まり返る。
まるで時が止まったかのように、誰も動かない……蝋人形の館にでも迷い込んだみたいだ。
「………」
誰も何も返さないから、僕はその席の椅子を引いて座る。
そしてふと何気なしに首筋に触れ、ああ……と納得する。
……昨日竜一に付けられた痕が、ここにあったんだっけ……
解った所で、今更隠す気にもなれないけど……
そのまま片肘をつき、窓の外を眺める。
学校をぐるりと取り囲む塀。それに沿って立ち並ぶ、新緑萌える桜の木々。
目が痛くなる程深い青空。
小さな白い薄雲。
暖かな日射し。
鮮やかな色が目の奥に飛び込み、眩しすぎて瞼を閉じる。
……ねぇ、竜一
少しは僕も強くなった……?
竜一のオンナらしくなったかな……
″しょーもねぇオンナだな″
僕の中に棲む竜一が、大きな手で僕の髪をくしゃくしゃと掻き回す。
シニカルに、でも優しさを孕んだ瞳を僕に向け……目を細める。
そんな顔を、僕だけに見せてくれる。
……なんていう竜一は、やっぱり僕の想像の中でしかあり得ないんだろうか……
暫くすると、教室内は何事も無かったかのような喧騒に戻る。
だけど、僕という存在が交わって溶け込んだ訳じゃない。
あくまで僕は浮いた存在であり、僕だけが周りと同調できずにいる……
周りと同じ様に見えたとしても……生き物の擬態の様に、所詮は似せ物……
学生服を着た学生でありながら、普通の学生ではない……似て異なる存在……
アパートに帰ってポストを見れば、そこには白い紙が挟まれ風に揺れていた。
引っ張って取り出して見ると、それはガス点検のお知らせであった。
不動産会社、お知らせの文字、丁寧で堅い文がつらつらと連なった最後に、工程日時と請負会社が記されていた。
特に気にする事なくそれを手にし、部屋へと上がる。
そして台所へ向かうと、見逃さない様にと冷蔵庫のドアにそれを貼り付けた
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