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膝を折り曲げ、正座を崩したようにペタンと床に尻をつく。
……わからない。
ハイジが……わからない。
頭が真っ白になって、何も考えられない。
四肢や肩は小刻みに震え……上擦りながら吸うばかりで、まともに息もできない。
何より、体に力が入らない。
寒気がする。
……ハイジの話は、何処まで真実(ほんとう)だったんだろう……
″何だかんだ言いくるめて……この首輪を付けさせて……″
″……いい具合に従順な奴隷に成り下がったら、そういう趣向の顧客に出荷してるって話″
施設の話も。僕と似た境遇の生い立ちも。僕を……想っていることも。この首輪の意味も。
繊細すぎる、優しさも。
……僕を、従順な奴隷に飼育する為……?
「………」
プランター横にある、薄型ノートパソコン。
コードに繫がれ、画面は閉じられた状態。
蝋燭の炎のように揺れる、黄緑色の小さな光。
これを開けば、直ぐにトップ画面が見られるのだろう。
そこに、飼育された女性の映像や顧客リスト……凌のマンションにあったようなデータが沢山あるのかもしれない。
……だけど、開けて見る勇気はなかった。
パソコン自体、弄った事もない。
力無く彷徨わせた視界に入ったのは、USBメモリー。
無知な僕でもこれは知ってる。
データを保存するやつだ。
「………」
息を飲む。
その僅かな喉の音でさえ、心臓は激しく警告音を鳴らし続ける。
緊張の中……
パソコンに突き刺さったそれに、ゆっくりと手を伸ばした。
その時。
暗闇から、二本の腕が視界の左右にスッと現れた。
「………、っ!」
肩がビクンッと大きく跳ねる。
自分でも驚くくらい……大きく。
ヒヤッとした。
背筋が寒くなり、体が凍り付く。
気配なんて……無かった。
足音も、しなかったと思う。
その腕が僕を緩く抱き締めると、肩口に顔を寄せられ、荒い息が掛かる。
「……さくら」
獲物を狩る捕食者──
首輪を器用に上へずらされた後、そこに唇が当たり、噛み付くように歯で食まれた。
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