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紘はおもむろに立ち上がり、テレビをつけた
静かだった空間に賑やかな声が交じる。
「ほら、ゆっくり深呼吸してみ。」
テレビの音もあってか、緊張していた気持ちが少しだけ緩む
紘が座るとき、ついでの様に膝の上に乗せられ背中を撫でながら深呼吸をする様に言われた
小さくスーハーと息をするが深呼吸と言う程の大きな落ち着いた呼吸もできなかった
勝手に、くっつく。
心臓のトクトクという音が聞こえてきて体から力が抜けるのが分かった
「……3日も1人で辛かったろ。」
「まさかお前にそんなこと言われる日が来るとは思わなかった」
「茶化すなよ。聞いてやろうとしてんだから。
何か言われた?それとも何かあった?」
ぎゅ、とシャツを掴んで俯く
「お前さぁ、なんで連絡してこねーの?」
「…飲みたい気分じゃなかった」
「そうじゃなくて。
何でしんどいとき黙ってんのって聞いてるの」
「明日連絡するつもりだった」
「は?んだよそれ」
苦笑しつつも再度少し溢れた涙を拭ってくれた
正直、こんなダサいこと言うつもり無かった。
けど、紘の前だとどうしても気持ちが緩む
口を開けば、涙と共に言葉が溢れた
「……教頭に陽のこと、言われて……っ俺、頑張ってのに…」
口を開いては閉じ、それを何度も繰り返している内に次々と出てくる涙で視界がぼやけてもう前は見えなくなった
「……っ、親とか…施設、の…事とかもあって…正直、…怖いし…っ」
本音を言えば、自分の事でもう精一杯だった。
それでも、なるべく学校に来てほしくて連絡先を交換したり、家に行って話した事もあった。
苦手な、怒られることだってずっと耐えてた。
紘の首元に顔を埋めて嗚咽も抑えられずに泣きつく
事故で形の変わった、赤でぐちゃぐちゃの母さん達の事を受け入れられないまま施設ぐらしになって、そこでも自分の気持ちを整理する時間なんて無くて毎日をこなすのに必死で、気づけば就職で、そんな状態で陽の家庭問題にも薄々気づきながら踏み込んで。
「……それで、最近…ずっと頭痛くて…なのに、どうしていいか、分かんないしっ…」
「頭痛ねぇ」
「……寝れなくて、次の日もふらふらする時もあって…お便り誤字多いとか授業声小さいとかも言われて…できない…もうやだ…っ」
もう、とにかく怖かった。
言われるであろう非難の声が怖いのか、
全く認められないことが怖いのか、
あの日の態度を叱られるのが怖いのか、
今までの教頭の態度が怖いのか、
陽の真実を受け止めるのが怖いのか、
それとも最近頻繁に思い出すあの記憶が怖いのか。
原因はもうごちゃごちゃでよく分からない。
ただ足が竦むような不安感が襲ってきてただただ「怖い」それでいっぱいだった
紘は何を言う訳でもないが、背中を撫でる手だけは止めないでいてくれる
しばらくして涙が止まると紘の肩は俺の涙で濡れてしまっていた
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