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気持ち
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「…なぁ、紘」
タイピングの音を聞きながら静かに口を開く
視線はコップの中の水。
「どした?」
パソコンに集中しているからか、返事は上の空。
「付き合う?」
唐突な言葉に驚いたのか、タイピングの音は消えた
もう少し前置きとか流れがあれば会話もしやすいんだろうけど、前置きの為の会話も面倒くさいからしない。
驚いた紘が突然動くからコップの水を落としそうになってしまって慌てて持ち直す
「…は?」
「俺はいいよ。」
紘と恋人同士になることに抵抗は無い。
「俺のこと好きになってくれた?」
「紘の事は好き
でもそれがどういう分類のものかは分からない
恋愛対象じゃないかもしれない
…でも、俺今紘に突き放されたら割としんどいなって」
ここ数日の自分を振り返ればそれは断言できた。
紘の側で落ち着ける自分。
でも、それとは裏腹に他人に会うことが怖くて、気持ち悪くなってしまうこと。
それをいつも何とかしてくれるのは紘だ。
いつの間にか大きな存在になってしまった紘に、このタイミングで見放されたら結構きついんじゃないかと思う。
紘がいない事がってより、安心できる場所がなくなるような気がする
「…大丈夫、俺はお前の隣にいる
だからそうやって変に焦って恋人とか、そういう関係に持っていこうとするな」
「俺と付き合いたくないの?」
紘は俺の事を好きと言った。
ならどうしてそんな事を言うの?
俺がそれでいいって、言ってるんだけど。
「正直いえば俺は付き合いたい。
お前は知らないかも知れねぇけど、ふとした時まじでお前のこと欲しくて堪らなくなる。」
なら、尚更…
「でも片方の気持ちだけで付き合うってのは嫌なんだよ。
付き合うなら律も俺の事をそういう対象としてみて欲しい訳。分かんだろ」
「ちょっと何言ってるか分かんない」
「分かれよ」
…両想い、ってやつじゃないと恋人にはなりたくないって事?
両想いってそんなに重要なことだろうか。
俺にはよく分からない。
相手の気持ちとか、そんなに重要なことか?
「はは、嘘。
紘の言ってること分かった。だからもう言わない」
俺にはそこまで重要な事には思えないけど、紘はそれを大事にするって事は分かった
「…けど。
俺紘のこと好きになりそう
分かんねぇけど。
俺…好きになったら絶対自分から言えないタイプだからお前がちゃんと気づけよ」
紘のこと、嫌いな訳じゃない。
最近、少しだけ…もしかしたら俺…。って思う事が無いわけじゃない
でもそれに気づいたらきっと俺は言えないどころか側にいることも気恥ずかしくなってしまいそうだ
「お前…そういうとこまじで可愛い」
大丈夫、見逃すわけねぇよ。そんな言葉と共に膝の上に乗せられた
そんな、不器用な俺にも紘は優しいからなんだか嬉しくてへにゃっと笑ってしまえば困ったように苦笑してタイピングを再開した
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