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言え
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「何でもない」
「大丈夫」
「気にしないで」
それしか言わない。
「分かった。大丈夫なんだな
でも教えろ」
「だから大丈夫だって」
言わないなら、隠したいなら、もっと上手くやってくれ。
「あぁ、そうですか」と俺は引けないんだよ
細い指先を包み「言え」もう一度同じ言葉を繰り返せばぶんぶんと頭を横に振られる
これも何回目か。
「そんなに言いたくねぇ?」
息をひとつ吐いた
「言いたくないんじゃない
大丈夫なの」
何故、口を開こうとしないのか。
今までは思ったこと聞いたこと、感じたことを直ぐに口にしてくれていたのに。
それが構ってられないと思いつつも可愛ところでもあった。
「ほんとか?」
「ほんと。だから言わない」
……こんなに頑なじゃ、しょうがねぇか。
黒い何か。
それはきっとストレスからくるものだし最悪、幻覚。
昨日もあんな様子だったのに「大丈夫」なんて、そんなはず無かった
律が「大丈夫」といってそっぽを向く度、「大丈夫じゃない」そう言われているようにしか見えなかった
でも、こんなにも言いたくないならこれ以上言葉を待つのは律にとって嫌なことになるだろう
………言ってくれれば良いのに。
楽にしてやるのに。
「わかった。ただ、無理はすんなよ」
その小さな頭を撫でる
相変わらず柔らかい髪。
「飯作るから少し待ってろ」
ソファに律を置いて、晩飯をつくりにキッチンに向かった
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