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初日
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「ぃ…いらっしゃいませ」
いかにも緊張してますって発声。
動きもぎこちないし、笑顔も固い。
自分で分かってる
分かってるけど、緊張がそれを邪魔してくる
入店してきた一人のお婆さんが俺を見て小さく微笑む
その人は珈琲とチョコタルトを注文した
店長に聞けばここの常連さんらしい。
3時のおやつって感じにいつも3時頃来店すると言っていた
「お待たせしました
こちら珈琲とチョコタルトになります」
「あら、ありがとう。」
「いえ、礼には及びません」
……え。何言ってんだ俺。
頭の中は一瞬でパニックになる
あああ、もう駄目だ何だこれ。
大体お客さんはお金を払って注文しているのに「礼には及びません」って何良い事した風な返しをしてんだよ
当たり前のことしてるだけなんだよ
あぁ、もうほんとに…
「すみません…」
あわあわと口を閉じたり開いたりしてたらその女性と目が合う
「面白い新入りさんが入ったのね」
……おっとり系な方で良かった…。
心底ほっとしてもう一度丁寧に謝罪するとキッチンへ早足に戻る
「だいぶ慣れてきたかい?」
戻ってすぐ、珈琲を入れていた店長に声をかけられ、背筋を正すと苦笑いした
「やっぱり難しいですね」
「若いんだし直ぐ慣れるよ」
「努力します」
「仕事が丁寧だし、頭がいい。
期待しているよ」
そんな突然褒められても。
今さっきお客さんに訳のわからない謎発言してきたばかりなんですけど。
「今日はあと一時間、頑張って」
時計を見ればもうそんな時間だった
意外とあっという間。
さっきエプロンをつけたばかりだと思っていたのに。
すごく緊張したしミスもした。
でも、ここでなら頑張れそうだとも思った
変わらないと。
いつまでも怖い怖いじゃダメなんだ
進まないとずっと変われないままだってわかってるんだから、ちゃんと進まないと。
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