アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
オメガバース 万山
-
「なっ…!?」
足元に伏した敵、真選組の監察から、己が今までに感じた事のない強烈な甘い匂いがした。
今まさに殺そうと構えた刀を投げ捨てて、襲いかかってしまいたくなるような、濃厚なフェロモン。
強めの抑制剤を常に服用しているため、フェロモンに誘発されるなどという事態は、起きたことがない。
と、すれば。
「ま、さか……ッ!」
一つの可能性に思い当たった瞬間、心臓が、ズクリ、と聞いたこともないような音を立てた。
それは一度には収まらず、寧ろもっと大きく、バク、バク、と頭の中に響いてくる。
ぐわん、と頭が揺れて、三半規管が、その仕事の殆どを放棄した。思わず、刀に体重をかけて縋る。
アルファである己でもこうなるのだ。オメガであるこの男は、果たして大丈夫なのだろうか。
は、とそれに気がついたら、今まで自分のものしか聞こえなかった呼吸に、別の、もっと早い息遣いが混ざっているのが聞こえてきた。
うつ伏しているので顔は見えないが、それでも自分よりも余程余裕がないのが分かる。
「は、・・は、ぁ、ぁあ、ふ、ぅ・・・」
不規則な、喘ぎが混ざり始めた呼吸を感じ取ると、それに釣られて己が息も、先程とは比べ物にならない程に早まった。
「は、・・くそ、ハァッ・・・」
思わず普段ならば口にしない悪態をついた。
膝が笑うのを止められない。
ずるずると、その場に座り込んでしまう。
これが運命の番の匂いか、と、その影響力に慄いたのも束の間、一層濃くなるフェロモンに必死で自我を保つ。
恐ろしかった。
自分の意思とは反対に、身体が、本能が、片割れを求める。
犯せ、手に入れろ、と叫ぶ。
一瞬でも気を抜けば屈してしまいそうだ。
大量のフェロモンを放ち続けている男は、自分の下で身を震わせていた。
必死に呼吸を整えようとして、その結果アルファのフェロモンを大量に吸い込み、危険な状態だ。
本格的にパニックに陥る前に、一度落ち着かせなければ。
持ちうる理性を総動員して、携帯している水を取り出し、一口飲む。
焼石に水だが、何もしないよりはマシだ。
冷たい水が、幾らか自分を取り戻させた。
目の前で喘ぎ苦しむ監察にも飲ませなければ。
伏せていた顔を上げさせた瞬間、ぐら、と揺れた理性を奥歯を噛んで必死に留める。
赤く上気した頬。ぼろぼろと零れる涙。ぐ、と寄せられた愁眉。喘ぎを噛み殺して戦慄く唇。
これを前にして、自我を失わぬ男など居るだろうか。
いや。
ここで衝動のままに犯して仕舞えば、十中八九この男は番となる事を拒むだろう。
とすれば。
一から口説き落とさなければ。
面倒だとは思わない。むしろ、楽しみだ。
顎を固定して水を飲ませる。
幾らかは口端から流れ落ちてしまうが、喉が数回動いたのを確認して、首筋に手刀を叩き込んだ。
予想外な展開だったのだろう、目を零れんばかりに見開いて、意識を失った。
晋助に知らせなければと思い、携帯を取り出してメールを打った。
携帯を閉じて、懐にしまう。
抱き起こした細い体を抱えて、かぶき町の潜伏場所にしている家へと向かった。
晋助
急なことで済まぬが、拙者の運命の番が見つかったので、全力で口説こうと思う。
恐らく、暫くは連絡がつかないと思われるが、案じ召されぬよう。
万斉
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 14