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「あなたに兄弟が出来るの、しかも弟よ」
そう笑顔で話す母親の顔は今でもよく覚えている。
俺の大好きな顔だから。
俺が生まれて直ぐに父親は事故死、だからどんな顔だったとか性格だったとか、声や匂いなんて覚えてる訳もなく、『父親』と言う概念が俺にはなかった。
だから部屋の隅に置かれていた遺影が不思議な物に見えてしょうがなかった。でも、唯一俺が知る『父親』の顔でもあった。
他に写真や父が居たという証拠は無く、母曰く「写真嫌いで、潔癖症な人だったから」とのことだった。
少し表情に影を落とした母親にそれ以上の追求は出来ず、俺は適当に返事を返してそれ以上の『父親』について聞くことはなかった。
9歳まで女手一つで俺を育てた母親はある日、「合わせたい人がいる」と言い出した。
何も言わない俺を見た母親は手を引きいつもは行くことはない綺麗な公園へと足を踏み入れていた。
春には桜が咲き誇り、秋になると緑色だった葉っぱは綺麗なオレンジや黄色に染まり、冬の準備をしている。
公園の中心に大きな噴水があり、夏になると子供が楽しそうな声をあげて水浴びを楽しんでいた。
その輪に入ることのなかった俺は遠くから眺め、毒を吐き、その場から逃げ出していた。
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