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なんのためにこんなことを言っているのか、自分でもわからなかった。
明らかに合意の上ではないだろうあの行為を、彼の嗜好だろうと決めつけて。
青年の背中に回していた手が離れて、彼が少し俺から距離を取ったのがわかった。
小さく開かれた口からは、何かを言おうとしているのかぱくぱくと動くが、
また、ひゅっと空気を切るような音だけが聞こえている。
「否定しないんだ?」
「…」
「見かけによらず、淫乱、なんだな」
びくっと揺れた体が、徐々に痙攣していくのがわかる。
ヒューヒューと空気を懸命に取り込もうとするその様子は、
見るからに全身で否定しているのがわかるけど
彼が何かを話すことはなかった。
俺の顔をまっすぐに見ていた真っ青な顔がわなわなと震え、
やがて力をなくしたように俯いて、
何も言わずにふらりと立ち上がる。
今にも倒れそうな彼を支えてやろうと少し手を伸ばすと、異常なまでにびくりと体を強張らせたのでその手をひっこめて距離を取る。
こんなのただの嫌がらせじゃないか。
下手したらパワハラ、いや、セクハラか。
何か弁明でもしたらいいものを、彼はふらふらと揺れる体で後退り、
躓いたのか会釈をしたのかわからない程度に頭を下げて廊下の角を曲がって見えなくなった。
その瞬間、言われもない罪悪感に襲われたけど、今更追いかけて謝ったところで彼を余計怖がらせるだけだ。
俺も大きく息を吐いて、
寝不足で痛むこめかみを強く抑えながら踵を返す。
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