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僕の両親は、僕が物心つく前に事故で亡くなっていたから、
母方の祖父母の家に置かせてもらって、そこから近所の学校に通っていた。
弓弦君は近所に住んでいたから、自然と一緒に登校するようになったけど、彼は可愛らしい顔で男女ともに人気があったし、
ろくに喋らない僕なんかと一緒にいる必要はなかったのに、いつも僕には優しくしてくれていた。
そんな彼がクラスのみんなも大好きだった。
「凪、明日の遠足はおやつ持って行っていいのよね?」
小学5年生の春、祖母が夕飯を食べながら聞いてきた。
「う、う、う、うん、お、…おや、おや、おやつ、持ってい、いいいくく」
「凪の好きなチョコレートとグミを買っておいたからリュックに入れておくわね」
「うん、あ、あ、ああありが、とと、と」
この時の僕はまだ、吃音だからと言っても祖父母にはよく話をしていた。
学校では、周りの視線が気になって無口になりがちだけど、
弓弦君は僕が話していても他の子みたいに笑ったりしないから
世間話程度には話もできていた。
「は、はははい、お、お、おじ、おじ、いいちゃん」
「ああ。ありがとう」
夕食を済ませると自分の食器を台所に下げて、祖父に食後のお茶を入れる。
祖父は無口なほうだったけど、何か話題があれば普通に話していたし、
よく頭を撫でてくれていたから怖いと思ったことはない。
お茶を飲んでからお風呂に入って、自室で本を読む時間が好きだった。
祖父の趣味で家にはたくさんの本があったし、難しい漢字も辞典で調べながらよく読んでいた。
友達が少ない僕にとっては、それが唯一の楽しみの時間だったり、
両親がいないのは寂しいけど、祖父母がたくさん可愛がってくれていたから不満に感じることもなかった。
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