アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
76.
-
シャワーを浴びられるようになってから、凪はみるみるうちに反応を示すようになった。
人形のようだったのが、今では赤子のような反応を俺以外にも見せる。
例えば、
「凪君おはよう、今日もいい天気ねぇ」
久米さんが病室に入ってきて話しかけると、返事をするように瞬きをするし、
「凪君、今日のご飯は大好きなハンバーグよ、よかったわねぇ」
良く訪れる看護師が食事を運んでくると、俺以外の手からも食べれるようになった。
俺はというと、会社には家庭の都合で親戚の病気の子供の面倒を見なければいけないと説明して、なんとか自宅勤務を長くできるように申請したのが通ったので、1日の大半は病院にいるようになった。
俺がこの病院に通っているのを知っているのは、ここの病院関係者と、
凪と同じ清掃員として働いていた第一発見者の橋本さんだけだ。
最初は俺と凪の関係を疑っていた彼女だが、残業中に何度か話したことがあって、弟と同じ年だから情が沸いてしまったと説明したらあっさり納得してくれて、周りに事情を話すのは面倒だからと黙っておいてくれる約束を取り付けた。
「あ、瀬田さん、凪君のことで先生がお話したいって言うんだけど、午後から時間とれるかしら」
病室で凪に本を読み聞かせていると久米さんがやってきたので、二つ返事をしておいた。
きっと今後の治療の相談だろう。
凪はまだ話せないながらも、今では介護の手を借りたらトイレへ行くことも、シャワーもできるまでになっていた。
「お前、ちゃんと頑張ってえらいな」
笑って髪を撫でてやると、それにすり寄る様に首を傾けて目を瞑る。
これは他の人にはしない、俺に対してだけの反応だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
76 / 212