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助け船
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「おい、大丈夫か?」
声を掛けて見ると葵はビクリと体を震わせては此方を向いてきた。
亨を見ると少しだけ安堵したように葵の肩が下がる。
亨は葵に近づくと彼の肩を抱き寄せてはその場に立たせた。
「すみません。また塩谷くんに助けてもらっちゃいましたね·····。」
俯いて謝るばかりで動かない男の制服に付いた土をほろってあげる。
「だ、大丈夫です。自分でやるので·····」
すると、男は避けるように自分から離れると
自ら制服をほろっては潰れてしまった花の片付けを始める。
亨はその後ろ姿をじっと見つめるだけで
男にかける言葉が見つからないでいた。
勢いで男の悲しげな表情を見たくないと思っただけで飛び出して行ったものの、いざ金髪を目の前にして標的にされかねないと思った。
そう思った瞬間、自分を犠牲にしてまで止めるようなことも出来なかった。
これが自分にとっての精一杯だった。
「あのさ、この前おすすめの花教えてって言ったじゃん。」
丸くなった哀しげな背中に問いかけて見ると、手元がピタリと止まった。
「今度、母親に贈ろうと思うんだけど何がいいかな·····?」
社交辞令で言ったはずの話をここで話題にするとは思わなかったが目の前の男が花の話をすると明るくなるのが分かっていたので問いかける。
すると、葵は立ち上がり俯きがちであったが答えた。
「薔薇とか·····入ったアレンジメントを渡すとだいたいは喜ばれるかと·····あと、お母様が何色好きかどんな花が好きかで変わりますが·····」
「そう、ありがとう。」
あんな事があった後で流石に笑顔までは行かなかったが少しだけ明るくなったような気がして亨はホっとする。
「あの·····もし良かったら·····塩谷くんの花束僕が作ります。」
「うん、まだ具体的なこと考えてないから考えておくよ。」
「はい。」
母親に花を贈るなんて嘘だ。
考えておくなんて言っておいて全く考える気はない。自分との会話で少しでも葵の気持ちが軽くなればと思ったが、嬉しそうに返事をしてきたので
悪い事をしてしまったかもという気持ちになった。
「先程はありがとうございました。やっぱり塩谷くんは優しいですね·····。」
葵は頬を赤らめていた。
表面上の言葉しか言っていないことを真面に本当だと捉えてしまうし、所詮偽善の優しさしか出来なかった自分に対して、優しいと言ってくれる葵に胸が痛くなる。
真面目で純粋な奴と自分じゃ立っている場所が違う。
そんな否定的に思う自分と、虐め自体はどうこうできる訳では無いけど葵が少しでも笑顔になれる時間を自分がつくれたらと、思う自分がいた。
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