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淫魔くん、襲い受け④
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とにかく、魔界での時間は一瞬だった。
あの後両親に歓迎され盛大にパーティを開き、数少ない友達と偶然会って一緒に魔王城までついていったり、今流行りだという魔界のスイーツを食べに行ったりと、非常に充実した3日間を過ごした。
魔界ステーションについたルイは、使い魔に見送られながら魔界を後にした。
見慣れた部屋のドアの目の前に降り立ったルイは、周りに誰もいないことを確認して空間魔法で家の中へと入っていく。
家の中はシンとしていて、家主の帰宅時間に合わせたつもりだったがどうやらまだ帰ってきていないようだった。
家の中は出てきた時よりも散らかっていた。
玉木はああ見えて綺麗好きで、服を脱ぎ散らかしたり飲み終わったコップを放置したりなんかは滅多にしないのだが珍しくそういった痕跡がある。
よっぽど忙しかったんだろうなと、そんなときに家をあけてしまって申し訳ない気持ちにすらなった。
せめて帰ってくるまでに綺麗にしようと、黙々と掃除に取りかかる。
ここ数日は暇すぎて家中ぴかぴかにしてしまっていたから久しぶりにやりがいがある。
掃除が終わったら次は夜食作り…と、ルイは無心でタスクをこなしていった。
「はあー、おわったぁ」
何とか家主が返ってくる前にすべてを終わらせたルイは、ぼすんとソファに寝転がる。
(あ~、これだこれ。この固さにすっかり慣れちゃったなあ)
実家のものとは違い、高反発のソファの感触にちょっぴり嬉しくなる。
低反発のものも気持ちよかったけど、こちらの方がしっくりきてしまうのはよほどここでの暮らしが快適だからということだろうか。
「…それに、玉木さんの匂い…」
ルイにとって、すでに落ち着く匂いになっていた。
魔界で友人にあった際、人間臭いと言われたのを思い出す。
自分ではよく分からないが、もし自分が玉木と同じ匂いがしているのであればそれは何だかとっても嬉しいことのように感じた。
そんな匂いに包まれながらうつらうつらと舟をこいでいると、ガチャリと玄関の鍵が開く音がした。
今の今まで靄がかっていた頭が一瞬のうちに覚醒する。
足がもつれそうになりながら、慌ててソファから飛び降り玄関へと急いだ。
「玉木さんっ!おかえりなさいっ」
思わず息を切らすルイの姿に、当の家主は驚いたように目を見開いた。
ルイは勢いのまま抱き着いてしまいたい衝動を堪え、だが靴を脱ごうとする玉木の目の前でぴょんぴょんと跳ねる。
「おー、ただいま。帰ってくるの今日だったか」
玉木ははしゃぐルイの頭を乱暴に撫でると、そのまま寝室へと着替えに行ってしまった。
久しぶりの再会だというのに、相変わらずドライの玉木に少し寂しさを感じつつも、目の下の隈がくっきりとついているのを見たら文句など言えなかった。
着替えながらも玉木はずっと眠そうに欠伸を漏らしている。
「…玉木さん、いつまで忙しいの?」
先に飯を食う、と席についた玉木に夕食を用意しながら、ずっと思っていた疑問を投げかける。
玉木の仕事についてはよく知らないし、あまり首を突っ込んでもきっと嫌がられるだろうと思い聞かなかったが、あまりにも疲れ切っているのでさすがに心配になってきたのだった。
「クソ忙しいのは今日で終わり。明日明後日は休み貰ってる」
ルイの配慮なんて余所に、玉木は何も気にする素振りなくあっけらかんと答える。
そうなんだ、と相槌を打ちつつやっと玉木がゆっくり休めるということに胸を撫でおろした。
「よかった。玉木さん働きすぎてしんじゃうかとおもってた!」
「怖えこと言うなよ。この時期は毎年忙しいんだよ」
「…なんのお仕事してるか聞いてもいいの?」
「あ?…パティシエだけど。知らなかったか?」
「ぱてしえ」
ドキドキしながら聞くと、返ってきた言いなれない言葉。
(ぱてしえ、ぱてしえって…ぼく、どこかで聞いたことある、ぜったい。テレビで見たことある気がする!)
言い慣れないけれど、聞き慣れたような気がする言葉。
それもそのはず、ルイは人間界に来てから毎日のように昼のワイドショーを見てはスイーツ特集に釘付けになっているのである。
何度もその職業を耳にしていても何らおかしくはない。
ううん、と頭を唸らせるルイに玉木は呆れたようにつぶやく。
「たまにケーキとか持って帰ってきてんだろうが。あれ作ってんの俺。あれが俺の仕事。分かった?」
「え、えええええええええっ?!」
ここ最近で、一番の衝撃がルイを襲った。
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