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怒らないで
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「は、花!」
「何?」
腕を強く引っ張り早足で歩く花に一生懸命付いていく。
声色は普段通りだが、雰囲気が違った。
「花、もうちょっとゆっくり歩いて…。」
おどおどしながらそう声をかけると花は少し落ち着きを取り戻し、ゆっくりめに歩き始めた。
「…虎くん。」
「な、何?」
「俺の家向かうから。」
「ぇえ?わ、分かった…。」
ちょっと強引な花に動揺が隠せない。
いつもは虎くん虎くんと寄って来ては世話を焼いてくれる。
朗らかで穏やかで優しいあの花はどこへ行ったのか。
ぐるぐる考えている内に見慣れた花の家に着き、花が自室へと誘導する。
「座って。」
笑顔を全く浮かべず、少し眉を寄せて不機嫌といった表情を俺に向ける。
こんな花は初めてでいつも通りに振る舞う事ができず、ちょこんと地面に座る。
俯きながら花から声がかかるのを待つ。
「…。」
「虎くん。」
「は、はい。」
花は俺の前に座り、重く口を開いた。
「何もされてない?」
「あ、うん…。」
「本当に?」
花の見透かす様な視線を浴びて、竜也にされた事を思い出す。
「ち、ち、乳首を少し…。」
「…。」
黙り込む花の表情は更に険しく深刻化する。
完全に怒っている。
花の知らない姿に過去の記憶が頭の中で渦巻く。
自分の身勝手に手を焼いて、我儘を聞いてくれて、心配してくれていた。
だけど俺はそれに気づく事なく花とつるんでいた。
その結果がこれだ。罰が当たったのだ。
「…ごめん。花。」
「え?」
「俺が花言う事ちゃんと聞いてれば…。」
「…虎くんのせいじゃないよ。」
「でもあの時花は止めたのに俺…、何も聞かないで…。」
罪悪感で胸がいっぱいになり、目が熱くなる。
(嫌われてもおかしくない…。)
「ごめん…なさい…。」
「虎くん。泣かないで。」
花の言葉にボロボロと涙が零れていた事に気づく。
「…虎くんはちゃんと反省してるでしょ?」
「うん…。」
「なら俺はそれでいいよ。間違いに気づけたんだから。」
「でも、花、怒ってるから…。」
「…俺は自分に怒ってるんだよ。」
「え?」
意外な言葉に顔を上げて花を見る。
「俺が竜也くんの本性に気づいてればこんな事にならなかったんだよ。もっとちゃんと引き止めてれば…。」
花の悲しそうな表情に俺は左右に首を振る。
「ちゃんと助けに来てくれたじゃん。」
「せめて、せめて竜也くんの家に入る前に駆け付けてればこんな事起こらなかった。」
「違う!花は悪くない!」
つい声を荒らげてしまう。
本当の事だ。花は悪くない。
これは俺のせいなのに。
「俺が悪いんだ…。本当に…。」
「…まぁ、元は竜也くんが悪いけどね。」
「それは…、そうだな…。」
頷く事しかできない。
そもそもの原因を作ったのは竜也だから。
…そういえば何で俺が竜也の家にいる事を知っていたのだろう?
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