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「ありがとうございました」
「どういたしまして。
分からない問題があれば、また何時でも来てください」
他の職員がやって来る頃、女子生徒はもう大丈夫だと借りていた椅子を持ち主の教師に返した。
頭を下げてから教室へと帰っていく後ろ姿を見送る。
丁寧で良い子だ。
この頑張りが実れば良いと願うばかり。
教師なら皆思う事だ。
頑張りを知っているから実れと思う。
苦労して手に入れた沢山の選択肢の中から最善を選んで欲しい、と。
少し視線をズラし写真を眺める。
写っているのは笑顔が咲き乱れる教室。
においや湿度まで思い出せる程、鮮明で鮮やな記憶。
この子達は今、最善の中にいるのか。
今じゃなくたって構わない最期の瞬間しあわせだったと思えたら、思ってくれたらそれが最善な筈だ。
冬のにおいのする風が窓を叩き、長岡を現実へと呼び戻した。
暖房が効いてきた手狭な準備室にまた1人職員が挨拶をしながらやって来て、傍らのコートを指摘される。
「朝から頑張ってますね。
確か県立大行きたいみたいですけど、どうです?」
「初歩的な質問ではないので、後は数ですかね。
色々な問題に手を出して覚えていくのが手っ取り早い気がします」
「それはありますよね。
俺も手を使わないと覚えられないタイプなんで結構やりました」
歳が近く気さくに話し掛けてくれる隣席の教諭と話ながら、もうすぐ朝礼だと職員室へと移動した。
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