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「アリエル様。」
「……あ、カイ、どうかした?」
「どうもこうも、今日はため息ばかりではないですか。昨晩のことですか?」
「……エリックから、聞いた?」
「はい。」
「どういう、意味なのかな?やっぱり『ルナ』を、愛してるの……?」
昨晩の、エリックの甘言。
複雑な気持ちだった。
また、愛されたという嬉しい気持ちと、それは『ルナ』に対してだという、心苦しさ。
エリックは決して、俺を思い出してくれたわけじゃない。
「アリエル様。エリック様は、貴方様を、愛しておられるのです。」
「……え?」
「『アリエル』であろうと、『ルナ』であろうと、エリック様のお気持ちは変わらないのですよ。」
「それ、は……」
「たとえ貴方様のイメージが最悪からスタートしたとしても、貴方様を愛する。それこそ、証拠ではないですか。」
優しく微笑むカイ。
確かに、あの言葉に嘘偽りはなかった。
「もし、万が一。アリエル様と過ごした記憶が戻らないとしても、貴方様へのお気持ちだけは、変わらないのです。思い出はこれからも作れます。しかし、お気持ちは、作れないのですよ?」
「……そっ、か……そっかぁ……」
急に安心した。
エリックが、きちんと俺を見てくれてるってことを、理解したから。
ほっとしたら、力が抜けて、立ち止まってしまった。
「お疲れですか?ディランを呼んで、帰りましょう。」
今日は馬で来た。
ディランがその馬と一緒に待っているはずだ。
「はい。」
カイが少し離れたところにいる護衛のところに、伝言を頼みに行く。
その、一瞬だった。
「んぐっ?うう?!?!」
口を押さえられ、男二人がかりで路地裏に引き込まれてしまった。
*
「アリエル……さ、ま……?」
伝言を頼み、振り返る。
しかしそこにいたはずの、アリエル様の姿がない。
ざっ、と血の気が引いた。
叫ぼうとして、冷静になる。
ここで、『アリエル』様を呼んだら、まずい。
「ルナ様っ!ルナ様ーっ!」
「カイ執事長、どうしたのです?」
早くもディランがやってきた。
「カイ、執事長?顔が真っ青です……!」
「アリエル様が、いないのだ。」
「え?!」
「先程まで、すぐそこに、いたのに…!」
「そんなっ、手分けして探しましょう!」
「ええっ……!」
「まだ遠くには行っていないはずです。もしかしたら、ヴァネッサの手下かもしれませんし……慎重に探しましょう。」
「……ええ、そうですね…まずは店を、それから路地裏を探してみましょう。この辺りは入り組んでいます。」
「はい。」
「見つけ次第、ここに戻るように。」
はやる気持ちを抑え、頭を働かせる。
ディランと二手に分かれ、ここに戻ってくる可能性も考え、護衛達は待たせた。
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