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彷徨うもの 53
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アキラの後ろには、いつの間にかセベクが、セテフが、アビスが、デンウェンが勢揃いしていた。
ヘデデトの差し伸べた手を取ったアキラが、一歩前に出る。
「こんにちは。
皆さんは僕に会いに来て下さったのですってね?
ようこそ……僕はアキラと言います 」
アキラの隣に歩み出たセベクが、その後を引き取った。
「遠路はるばるご苦労だった。
アキラはこれで退席するが、皆は各々寛いでいただきたい 」
「皆さんも宴に来られるのでしょう?
何か……珍しいお話が聞けたら嬉しいな。
……では、後ほど 」
セテフに合図されたアビスがアキラを己の懐に引き寄せた。
膝裏に腕を差し入れ縦抱きに抱き上げると踵を返す。
「セティ…… 」
「アビスを付けるからゆっくりとお休み。
私が行けないのは残念だが……
愛しているよ。ラー…… 」
アビスに抱かれたアキラの頬を優しく撫でるセテフ。
鬣犬は勿論、アキラを娶ってからの彼を知らない者は正直面食らった。
……戦神が蕩けた笑みを浮かべて……愛の言葉を囁いている。
アキラからお休みの口づけが贈られると、すかさず啄ばむ口づけが返された。
「アキラ…… 」
腰にくる低音の声に呼び止められた。
セベクの表情も声も、普段と変わりないように感じられるかもしれないが、アキラは微妙な違いに気づいていた。
「うふふ…… 」
アビスに降ろしてもらってセベクに近づくと抱き上げて貰う。
「高台の僕の部屋で休んでくるよ。
また、後でね 」
“ ちゅ ”っとセベクの口角に口づけるとお返しが返ってくる。
機嫌を浮上させたセベクの腕の中でデンウェンと目が合った。
……こうなると、夫たちは大人げなくなる。
結局、デンウェンの後アポピス、ヘデデトと挨拶のキスをしてやっと謁見の間を後にすることが出来た。
高台へと向かう坂道でアビスに縦抱きされたアキラが、橡色の逞しい胸に寄り添っている。
「ねぇ、アビス 」
「ん? 」
アビスが優しくなった……
以前は、アキラが他の夫と一緒にいるだけでも嫉妬し、激情のままに翻弄したアビスがまるでセテフが浮かべるような “ 愛しくて堪らない ”といった表情で見つめている。
……でも……アキラは強引なアビスも好きだ。
「ね、アビス……ちょっと降ろして? 」
訝しげな表情で、それでもアビスは黙って降ろしてやった。
「アビス……ここ、憶えてる? 」
「ああ、勿論 」
即答したアビスは、何の変哲もないただの登り坂に瞳を巡らせた。
……ここは……
「俺たちがはじめて会った日、おまえを抱こうとした場所だ 」
アキラが腰のあたりに腕を回し、ぴったりと身体を寄せてくる。
「やさしいアビスも大好きだけど……烈しいアビスも好き…… 」
続いて、アキラの口が思わせぶりな言葉の形に動いた。
「!!! 」
頬を朱らめたアビスが歯を食いしばってアキラの肩を掴んだ。
口蓋すべてを食い尽くすような口づけの激しさに、煽ったアキラの方がたじろいでしまう。
もどかしげに首飾りを取り去り、肩から薄布を落とした。
複雑に重ねられた布を慎重に剥いでいきながら滑らかな肌に吸いついていく。
甘噛みしながらその唇は “ あの傷痕 ”のところにやってきた。
この雌は自分のものだと……
歯型の痕の白くなったミミズ腫れに、注意深く舌を這わせていた、そのとき……
「僕が……アビスの……アビスだけのものだったら……いくらでも噛ませてあげるのに…… 」
何も深く考えていない、アキラの言葉にアビスは……
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