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彷徨うもの 62
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此度の酒宴に各夫の従者達も招かれていると先程述べたが、守護夫達は一段高くなった上座にてアキラの元に侍っていたのでその従者達は下座に設えられた席でもてなされていた。
自然と情報交換が始まる。
この度は東西の砂漠の雄、白蛇王アポピスと、蠍王ヘデデトの従者たちだ。
似たような土地に住む事が共通の思考を生み出すのだろう、種族が全く違うはずの両者の間に思いの外、会話が弾んでいる。
無論、自国の繊細な話題に触れる事はせず、無難な噂話に終始することになる。
今宵、酒が入って口の軽くなった者たちから語られる話……
それは、自らの主の伴侶である【天女】の事。
はじめは己が主とその奥方との蜜月自慢の様相だった。
それが、成人直前ということで飲酒を許されていたアペデマクの耳に入るのは必然な事であって、聴力の秀でている獅子が聞き逃すはずも無く【天女】と聞き取ってからは、アペデマクの意識はすべてそちらに向けられていた。
蛇人族、蠍人族、今だどちらの城も訪れていない姫君は彼らにとっては謎のベールに包まれた神秘的な存在……でも無いことを知っている者は知っている。
どれほど見た目が美麗な姫でも、中身は【おイタが過ぎるやんちゃ坊主】もしくは
【言いたい事ははっきりという剛胆な姫】
なかでもヘデデトの退位を諌めた話は姫君の株を上げる最たる話であって、蠍人たちの崇拝の元となっていた。
アペデマクは黙って話を聞いている。
そこに、突然始まった蛇人たちの話。
ひときわ声の調子を落として、ヒソヒソと語られはじめた内容とは……
「……して、貴殿……
あの話は聞き及びか? 」
「 “ あの話 ”とは? 」
「ほら……コブラの若君の…… 」
「あの【傷】の事か? 」
「あの【傷】を負う事になった件よ」
硬く箝口令が敷かれていたはずがどこから漏れたのか、蛇人たちは詳しかった。
「天女様のあまりの艶やかさにあてられたネフェルテム殿が交合されたそうだ……
天女様も憎からず想っておられるご様子」
アペデマクは頭を殴られたような衝撃を受けて、暫し呆然としていた。
……次は、自分が天女さまと結ばれるはず……それは以前から決まっていて、あとは成人の儀を待つばかりだったはず。
第一、ネフェルテムはまだまだ小さな幼体だったはずなのに、あの姿は……?
「情を通じられて、大人になられた……という事か? 」
「あの姿は性的に成人なされたゆえのお姿。
下世話な話だが、我ら蛇族は成長が早い。
勃起することが出来て女体を堪能し、精通した。
もしそうであれば、立派な成人だ」
「……あの傷は? 」
「ヴァジェト様が罰を与えられたらしい……
許可を得ず天女様とまぐあわれて母君様の怒りをかったとか……
今も疎まれて辺境に蟄居させられていると聞くが」
「しからば、此度は?」
「末席といえども夫君は夫君、一堂に会した此度、無視は出来んよ」
「末席……? 獅子の若君は…… 」
アペデマクはもう聞いて居られなかった。
顔色を蒼白に変えて立ち上がった彼を従者が諌める。
「大丈夫だ……少し風にあたってくる」
その時、アキラがセベクたちの元を離れ、ひとりで回廊の方へ向かうのに気づき、すぐに後を追う。
やはりアキラはじっとしては居れなかった。
彼の心を占めるのは勿論……スーツケースだ。
不自然にならないよう中座すると、一目散に大広間を後にした。
小走りで回廊を通り抜けて自室を目前とした瞬間、何者かに腕を捉えられてそのまま支柱に押さえつけられた。
アペデマク。
両手首を片手で絡め取られて、背後は太い柱に阻まれている。
頭ひとつ大きくなったアペデマクの冷たい瞳が見下ろしていた。
次の瞬間、顔の横に衝撃を感じると……
そこにはアペデマクの掌が押しつけられていて、柱が……軋んでいる。
「あ、アペ……? 」
「天女さま」
言葉を続けようとするアキラの唇を、まるで罰するように塞ぐ、アペデマクの唇。
それはすぐに激しい口づけに変わっていく……
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