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Ωなんて < Side近衛
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あんな場所で、形振り構わずかよっ。
苛々とする感情のまま、心の中で悪態を吐いた。
授業中、ふんわりと微かに感じた神田のフェロモン。
微かなのに、その香りは、俺を存分に魅了した。
……[運命の番]かもしれない。
思ったのに、図書準備室に充満した情事のいやらしく、はしたない匂いに、胸の奥が、ジリジリと焦げる。
想汰が、なんとかこなした課題を手に、一緒に図書準備室に赴いた。
課題のノートは、想汰と俺で、半分ずつを抱えている。
「あれ? 開かない?」
図書準備室の扉を横にスライドさせようとした想汰は、首を傾げた。
微かに出来た隙間から、鼻を刺す匂いが漂う。
噎せ返りそうな濃い臭気。
情事の後だろう独特な残り香が、俺の脳を掻き混ぜた。
「わりぃ。俺、教室に戻ってるわ」
持っていたノートを想汰の腕の中へと預け、踵を返した。
「ぅ? え?!」
手の中に任されたノートと俺を交互に見やりながら、想汰は、その場で慌てていた。
苛立ちながら戻った教室には誰も居ない。
自分の座席に腰を下ろし、腹立たしさを紛らわせるように、ふうっと強く息を吐いた。
Ωなんて、あんなもんだ。
「発情期さえ乗り切れれば、優秀な遺伝子さえ手に入れば、決まった相手じゃなくても……誰でも、構わないんだっ」
独りごちた自分の言葉に、より深く、胸が抉られる。
鼻の奥に残っている匂いに、胸の底が焼け焦げる。
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