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俺、βだから
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『心の真ん中にあるもんが、思ったように操れるわけがねぇ』
…やっぱ、その通りだな。
自分の紡いだ言葉に、説き伏せられた気がした。
「やっぱ、お前、可愛いわ」
言葉に犬養は、ぽかんとした瞳で、オレを見上げた。
「オレね、お前のコト、好きだわ」
クセのある犬養の髪を、わしゃりと撫でる。
ぱちぱちと何度か瞳を瞬かせた犬養は、ポンッと掌に拳を乗せた。
「あれですか? 生徒として、可愛いって、…好きてっコトですよね」
…でも、先生の授業受けたことないけど、と犬養は、不思議そうに首を傾げる。
「ハズレ」
廊下の壁とオレの身体の間に、犬養を閉じ込める。
無防備にオレを見上げる犬養の顎に、指をかけ固定する。
頭を少し倒し、犬養の唇を目指した。
壁とオレに挟まれ、身体を硬直させる犬養に、キスの数ミリ手前で顔を止めた。
「キスしたいなぁっていう、好き」
犬養の口からは、言葉にならない暗号めいた音が漏れる。
「嫌なら突き飛ばしていいぞ?」
触れそうで触れない唇に、呼吸は既にキスしていた。
嫌なら抗えと伝えるオレの言葉にも、犬養は、壁に両腕を貼り付けたまま、動かなかった。
「お前もオレに惹かれてんじゃん」
唇に触れようとした瞬間、犬養の言葉に阻まれた。
「俺、βだから」
諦めたように静かに紡がれた言葉。
いつものテンションは鳴りを潜め、運命には逆らえないというように犬養は、ぼそりと声を放った。
「先生の子供、産めないです……。番にも、なれない、…です」
寂しそうに呟き、ぎこちない笑みを湛える。
「先生のコト、たぶん、好きですけど……、俺は、先生の運命の人じゃないです」
じわりじわりと、犬養の瞳は、涙に溺れていった。
運命の人じゃない。
その言葉は、言い知れないやるせなさを胸に植えつけた。
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