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そっくりな姿 < Side九良
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神田たちと別れ、家へと帰る道すがら、人気のない公園のベンチに腰を下ろし、犬養に電話を掛けた。
一頻り、反省の弁を連ねるオレを、犬養は、涙混じりの声で否定した。
その犬養の口から出てきたのは衝撃の事実。
第2の性別がΩだというコト。
オレの言葉を覚えていた犬養は、Ωである自分は、好きになってもらえないのではないかと要らぬ不安を抱えていた。
そんなコト、あるはずねぇのに。
やっと見つけた、[運命の番]。
オレは、この期を逃すつもりはない。
電話を切り、辿り着いたのは、犬養の家だ。
ガチャっと重たい音を立て、玄関の扉が開かれる。
ゆるりと開いた扉から顔を出したのは、犬養を少しのおしとやかにしたような女性だった。
「…はい」
「初めまして。九良 玄弥といいます。想汰さんの学校の日本史の教師をしております」
人当たりのいい笑顔を貼りつけた顔で言葉を紡ぐオレに、目の前の女性は、はっと顔色を青くする。
「な、な、何かしました? 想汰、何か問題でも起こしました?」
どうしましょうと慌てる姿は、犬養そのものだった。
似すぎていて、笑えるくらいだ。
「いえいえ、違います。……お邪魔させていただいても構いませんか?」
オレの言葉に、驚いたように息を飲んだ彼女は、慌て扉を大きく開いた。
リビングに通された。
ソファーにテレビ、ごく普通の一般家庭。
「飲み物、お茶、コーヒー? 紅茶……」
リビングからキッチンへと足を向けようとしながら、飲料の名前をぶつぶつと連呼する犬養の母親。
いきなり訪れた教師に、軽くパニックに陥っているらしい。
「あのっ」
声を張るオレに、見開いた瞳をこちらに向け、犬養の母は、動きを止めた。
「想汰くんを、オレに下さいっ」
直立不動から、直角に頭を下げた。
土下座した方が、よかったか…?
首を捻り、頭を下げたままに、ちらりと覗き見る。
唐突に放った想汰への求婚の言葉に、母親は、呆気に取られたように、俺を見やっていた。
きょとんとした瞳で見ている母親に、オレは、言葉を足す。
「オレは、想汰くんが好きです。番になりたいと思っています。……想汰くんを、オレに下さい」
もう一度、言葉を重ねた。
母親は、顔を真っ赤に染め、口許を両手で覆い隠した。
「いいのかしら? あの子、普通の子よ? あっ、でも、Ωだったのよね。で…でも……、なんの取り柄もなくて、本当に…」
はっとしたように、早口に言葉を繋ぎ、両手をバタバタさせながら、瞳を彷徨わせる。
犬養にそっくりな母親の姿に、オレは、堪えきれずに笑ってしまう。
オレの笑い声に、母親は再び、きょとんとした瞳を向ける。
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