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何ものにも代え難いもの
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「すいません。オレが、想汰くんをΩにしてしまったのかもしれません。責任、取るつもりです」
オレは、もう一度、頭を下げる。
「責任だなんて、そんな……。きっと、初めの検査で見つけられなかっただけで。βの子が、後々、Ωの判定を受けることだって、あり得ないことじゃない訳ですし……」
母親は、慌てたように、オレの肩に手をかけ、頭を上げるように促してくる。
「オレ、[運命の番]、見つけたんです。想汰くんが、オレの運命です」
ゆるりと頭を上げ、紡ぐオレの言葉に、母親の瞳は驚いたように見開かれた。
その瞳に気持ちを正し、オレは、言葉を繋ぐ。
「オレは、想汰さんが、いいんです。普通でも、普通じゃなくても、βだろうが、Ωだろうが、…αだったとしても、オレは、想汰さんが……」
…欲しいです。
そう口走りそうになり、思わず言葉を止めた。
オレは、この世の中の何よりも、犬養が欲しい。
たぶん、母親に止められたとしても。
誘拐でも、駆け落ちでも、何でも。
オレは、犬養を手に入れるつもりだった……。
でも、それは、犬養を悲しませるコトになる。
だから、オレは、例え断られたとしても、何としても説得し……。
「よろしくお願いしますっ」
がばっと下げられる彼女の頭。
「普通のなんの取り柄もない子ですけど、素直な明るい良い子ですから」
顔を上げた母親は、嬉しそうに頬を染め、オレに微笑みをくれた。
「想次さん…、あ、父親も喜ぶと思います」
反対なんてするわけないです、と彼女は柔らかく笑う。
はっとした顔をした彼女は、何度となく瞬きを繰り返し、言いにくそうに口を開いた。
「もしかして、もう子供……」
口許に手を当ておろおろとし出す母親にオレは、首を横に振った。
「ないです。高校はきちんと卒業して欲しいと思っているんで」
残り少ない高校生活。
犬養には、悔いの無い時間を過ごして欲しかった。
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