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癒しの存在 < Side九良
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泣かれたときには、本当に焦った。
別に凄んだわけでもないし、苛めたつもりもない。
ただ、元から粗暴なオレの態度が、懐里の壊れやすい部分を引っ掻いてしまったのかとは思った。
オレの態度が懐里を傷つけたのは、間違いないだろう。
拗ねていた想汰を連れてくれば、想汰も懐里も気を悪くせずに済んだのかもしれないと、場も和んだのではないかと、過ぎたことを軽く悔いていた。
変な疲れと共に、自宅に帰りつく。
明日は日曜だ。
家には想汰が待っている。
ほっとする感覚に、鍵を回し、玄関の扉を開けた。
だが、家の中は、真っ暗だ。
不思議に思いながらも、玄関の明かりを灯し、家の中に足を踏み入れる。
履いていた靴下を脱ぎながら、洗濯機に放り込もうと、洗面所を経由した。
「ん?」
明日辺りに回さなくてはと思っていたのに、洗濯機の中身がほぼ空になっていた。
洗濯機の中に入っていたはずの使用済みのバスタオルも下着もシャツも…ハンドタオルすらない。
不思議に思いながら、部屋着に着替えるために、寝室へと足を向けた。
寝室に降り注ぐのは、窓から入る月明かりだけ。
柔らかく照らされるベッドの上には、オレの衣類で作られた……巣?
もこっと盛り上げ、まとめられたオレの衣類たちが丸く円を描くように、並ぶ。
その真ん中で、猫のように丸まり、すよすよと眠る想汰。
その顔は、甚く幸せそうで。
……なんだよ。この、可愛い生物は。
「想汰」
ベッドの脇に座り、寝息を立てる想汰の頬に触れる。
耳の裏を擽るように指先で撫でれば、想汰の瞼が、ゆるりと持ち上がる。
「んぁ…、お帰りなさぃ…」
ぽやんとした瞳が、オレに向いた。
想汰の周りを見回し、綺麗に作られた巣に笑みを零す。
オレの視線を追うように、瞳を向けた想汰は、慌てたように身体を起こした。
「ぅわっ。……ぇっと」
恥ずかしそうに項垂れ、言い訳を紡ごうとする想汰の唇。
しょぼんと肩を落としている想汰の頭をぽんぽんと叩く。
「ずいぶん、綺麗に作ったな」
オレの声に、ぽんぽんされる感触に、がばっと顔を上げた想汰は、へらっと笑んだ。
ふんっと鼻を鳴らした想汰は、自慢げに声を放つ。
「自信作!」
嬉しそうに、自慢する想汰の姿に、笑みが止まらなかった。
「よし。お返しにグラタン作っかなぁ」
オレの言葉に、想汰は、寝惚けながらも喜んだ。
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