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挑戦的な微笑み
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寂しそうに瞳を細めた彼女は、遠くを見詰めた。
「私の[運命の番]は、行方知れずなの。たぶん両親が、手を回したんだと思うわ」
ふぅっと溜め息にも似た息遣いで空気を吐き出した彼女は、諦めたように言葉を繋ぐ。
「私を良家に嫁がせたいのよ。私の両親、変なところに見栄っ張りなの」
嫌気が差すと言わんばかりに、彼女は、呆れを露にした。
「でも、彼女が姿を消したのは、私のためでもあったのかも……」
ふわりと戻ってきた彼女の視線が、オレを捉えた。
「あのコと一緒になれば、心や身体は満たされていたと思う。でもね、良家に嫁ぐっていう両親の願いや私の優雅な将来像は、彼女とでは叶わない。私のコトを思ってだったのかなって……」
寂しそうに紡がれる言葉に、色々な幸せを一度に手にすることは、困難なのだと感じた。
人生とは、取捨選択を求められるものなのだ、と。
「彼女の優しさを無駄にしないように、私は、探すコトを止めたの」
本当は、彼女の元へ行きたい。
探し出して、抱き締めたい。
だけど、彼女の優しさを無下にも出来ない。
「でも、まだ諦めきれなくて……。今すぐに結婚なんて考えられないの」
ぶわりと吹いた風が、彼女の遅れ毛をふわりと舞わせた。
顔にかかる髪を寄せながら、彼女は、言葉を繋いだ。
「この家に連れて来ても、来なくても、出会うときには、出会ってしまうものよ。どんなに遠ざけようとね……それが、運命だから」
紡がれた言葉たちには、運命の相手なら、再び、会えるのではないかという彼女なりの期待が込められる。
「ずっと怯えているのなら、…貴方の愛おしい人が運命の相手に会って、自分が捨てられるかもって不安なら、いっそのこと、ここへ連れてくるべきね。この家が運命の場所かどうかわからないけれど。貴方の想いが勝つか、その人の運命が勝つか……。もしかしたら、貴方の愛が勝つコトが、あるかもしれないわよ」
避けられない運命に、オレたちは、抗う術を持たない。
だけど、運命を覆せるほどの愛があったなら。
もしかしたら、オレは懐里の傍に居続けられるかもしれない。
少しの希望を見出したオレの瞳に宿る光に、彼女は笑む。
「確率は低いと思うけれど。私は、貴方を応援してるわ」
彼女は、挑戦的な微笑みを、オレにくれた。
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