アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
臨床試験の推薦
-
番になってしまっているαやΩでは、番のフェロモンにしか反応を示さなかったり、フェロモンが落ち着いてしまったりしているので、臨床できない。
番になっていない九良と想汰なら、この臨床は打ってつけだ。
「ちょうどいいじゃん」
明るく放たれる私の声に、宇波の話に疲れた2人は、怪訝な顔をする。
「黒羽製薬の開発した商品の臨床試験、手伝ってあげてくれない?」
急な話題変更に、素早く反応したのは、九良だ。
「危ねぇもんは、嫌だぞ」
先程までの気色悪さを拭いきれないような顔のままに、言葉を放つ。
「危なくないし、怪しくもないよ。【防散スカーフ】と、【遮断マスク】だから」
くっと口角を上げ笑む私に、不信げな視線はそのままだ。
「お坊さん?」
私の言葉に、想汰は胸の前で、手を合わせた。
「いやいや、そっちじゃなくて」
お坊さんがスカーフを巻いている姿を想像し、思わず笑ってしまう。
「散るのを防ぐ方の防散だから」
ふっと息を吐き、呼吸を整え、手にしていたスマートフォンの画面を2人に見せた。
2年前に私が着けた灰色の【遮断マスク】は、開発中のものだった。
Ωのフェロモンの侵入を阻止する仕組みのマスク。
若いαを不埒なΩから守るためのものとして、作成された試作品だった。
今は、試行錯誤を繰り返し、通常のフェロモンならば、ほぼ遮断できるレベルに達している。
でも、未だに[運命の番]のフェロモンは防ぎきれず、マスクをしていても、胸の奥がざわつくのは否めないらしい。
【防散スカーフ】は、Ωの首許に巻くスカーフで、フェロモンの飛散を防ぐもの。
無闇にαを誘惑し、煙たがられるΩを守るのために。
Ωの誘惑に逆らうことが出来きず、不甲斐ないと嘆くαを減らすのために。
色々な事情で、[運命の番]と一緒になれないαやΩ、βのために。
黒羽家も、ろくでもない無益な研究をしているわけじゃない。
スマートフォンの画面を興味深げに見ながら、九良が言葉を紡ぐ。
「ま、いいんじゃね。危なくなさそうだし……。でも、臨床試験ってコトは、完璧じゃねぇのか?」
スマートフォンから、ちらりと上がる九良の視線。
「ん、たぶん……?」
重なる視線に、画面を見せるために伸ばしていた手を身体に引き寄せながら、軽く首を捻った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
169 / 224