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無言の拒絶
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淫靡な空気が、冷えていく。
興奮が去った空間には、青臭い匂いだけが蔓延していた。
殆ど乱れていない衣服を直した帝斗は、近くのテーブルへと置き去りにされていたタブレットを手にした。
何度かスワイプ操作した画面を見やり、口を開いた。
「毎週火曜、15時半。……まるで、事務作業だな?」
ふっと鼻を鳴らした帝斗は、嘲るような瞳を向ける。
「まぁいい。届けに来た日は、俺を呼べ。発散させてやる。溜め込むのは、身体に良くないからな」
くいっと上がる片方の口角は、私を心配しながらも、蔑みが滲んでいた。
何時もなら、黒羽の研究所からの帰りに食材や日用品を購入して戻り、夕飯の支度をする。
遅くなったその日は、惣菜を購入して帰った。
食品トレイに乗ったままでは味気無いだろうと、皿へと移している最中、縁が書斎からリビングへと出てきた。
「すいません。今日は遅くなったので、惣菜を買わせてもらいました……」
申し訳ないという思いから紡いだ言葉に、縁は、リビングから真っ直ぐに私の立つキッチンへと足を進めた。
いつもなら、リビングのローテーブルの前に座り、私が食事を運ぶのを待っているのに。
いつもとは違う縁の挙動に、視線を向けた。
重なる視線に縁は、瞳を細める。
縁の顔が、私の首筋へと、するりと近寄った。
「……っ」
予想外の縁の行動に、私は息を詰め、動きを止めた。
すんっと嗅がれた私の首筋に、ぞわりとした悪寒が駆けていった。
「黒羽とヤってきたのか?」
ストレートな問い掛けと、隠そうともしない嫌悪感が私に迫る。
痕をつけられていたのかと、慌て隠す首筋に、縁は呆れ混じりの瞳を向けた。
私の行動は、縁の疑問を肯定するものに他ならない。
「……好きなのか? 戻りたいなら戻れば良い」
見ているコトに堪えられないというように、縁の視線は私から逸れた。
ふぅっと小さく吐かれた溜め息と共に、縁の足は、キッチンの外へと向かう。
「好きだから抱かれた訳じゃありません」
苛立ちと呆れが入り交じる縁の背中に、言葉を放つ。
「私は黒羽の所有物ですから。断る理由もありませんし……」
身体が辛いから。
貴方が抱いてくれないから。
私は帝斗に縋るしかない。
でも、それを縁に告げ、お情けで抱かれるのは嫌だった。
縁に私を抱く義理は、ない。
私の言葉に、縁は声を返さない。
そのまま書斎へと戻ってしまった。
それ以来、私が帝斗に抱かれて帰った日は、何も言わない代わりに、書斎から顔を出さなくなっていた。
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