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運命を捩じ曲げる悪魔
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「[運命の番]は、運命の相手を守りたいと思うもんだろ? 哀しさや、苦しさを与えたいとは、思わないだろ?」
ちらりと寄越される黒羽の瞳。
続きの言葉を促すように、俺は、黒羽と視線を交わす。
「自分の気持ちを貫くんじゃなくて、相手の幸せを願っているだけなんだ。お前が[運命の番]の幸せを願えば願うほど、運命はお前に味方するんじゃないのか?」
くいっと上がる黒羽の片方の口角。
にたりとした笑顔は、うっそりとした悪魔の微笑み。
目の前の悪魔には、運命すら捩じ曲げる力があるように思えた。
出会ってしまったら最後だ。
会話を交わしたコトもない。
会ったコトも、見たコトもない相手。
でも、たぶん、その影を見ただけでも俺は、気づいてしまうのだろう。
そして、運命に引きずられるように、その相手に惹かれてしまう。
いくら足掻き逃げようとも、運命が味方しない限り、俺が那須田を傷つける未来しか存在しない。
賭ける価値が、ある気がした。
ここで逃げずに飛び込めば、運命が誰の味方についているのか、わかる気がした。
俺は心を決め、黒羽からスカーフを受け取った。
深く息をつき、車のドアを開けた。
近衛の人間と面識のない俺は、呼び出してもらう為に、フロントへと歩を進める。
俺の心臓は、あり得ないほどの爆音を打ち鳴らす。
「縁……?」
フロントに辿り着く前に、聞き慣れたその声が鼓膜を揺らした。
その音に導かれるように、俺は振り返る。
そこに立っていたのは、那須田だった。
それは、俺が運命をも味方につけた瞬間。
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