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全面的にイケメンなんだから仕方ない。 球技大会5
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野球は勝ってるんです、そういえば。
「お前出ればいいじゃん俺必要ないじゃん」
そして俺は拗ねていた。
だって聞いてくれ。
俺の代役で出た丹下が何とホームランを打ってしまっていたのだ。
しかもちゃっかりショートで守備もきっちりこなしたと。
そんな活躍されたら俺出たら駄目でしょ逆に。
苦笑いする丹下ムカつくわオタクのくせにスポーツも勉強もできるとか。
スポーツも勉強も普通の俺が今更試合に出て女子が納得するだろうか、いやしない(反語)
「てなわけだから、丹下頑張って」
「いやいやいや、ないないない」
「ありありありあり、お前出ろ俺は傍観しとく」
むしろ飯食った後で怠くて出たくないんで、丹下が出ればいいと思う。
こんなんで俺出ても活躍できないし。
そもそも活躍できないし。
無理矢理丹下を引きずりながらグラウンドまで来たのだが。
丹下は心底嫌そうに俺の腕を引きはがそうと必死だ。
「杉田氏、お願いします離してください」
「やだよ逃げるじゃん、離しませーん」
「逃げませんから!お願いだから離して!(森光がこわいんだよ!)」
「ほら真智、離してやんな?」
森光にやんわりと俺の手を掴んで丹下から離すとそのまま手を引かれて行く、何でだ。
今度は俺が恋人繋ぎされてる(自然にやるとこイケメンムカつく)森光の手を引きはがそうと必死だったり。
そんな俺たちに丹下は無表情で手を振り見送ったり、ついてこないし嘘つき。
何してんだ俺たち、めっちゃクラスメイトが白い目で見てる。
最近そういうの多いよねこいつらのせいだよね勘弁してくれ。
「だいたい丹下は30分後にバスケの試合でしょ?無理言わないの」
「でもだって…さっきの試合で活躍した丹下が悪い」
「(でもだってとか可愛いから)しょうがないだろ?今度は真智が頑張ればいいの」
苦笑いしながら言う森光にまぁそうだけどと思うけど活躍なんてできるわけないから素直に頷けない。
ぶすくれた俺の顔を見て一層笑いながら森光は大丈夫だよーと根拠のないことを言うわけで。
俺は一層ぶすくれるわけで。
「球技大会なんて楽しんで何ぼなんだから、活躍とかかっこつけるとか考えなくていいんだって。真智のまんまでいればいいんだよ」
「何それ発言がイケメンでムカつくわ」
「顔も性格もイケてるけど俺」
「自分で言うとか…!!」
「どうでもいいから早く並べそこの二人」
「「さーせん」」
先生に怒られてしまった。
クラスメイトどころか対戦相手も呆れてるし。
ぺこぺこ頭下げてたら、試合開始の宣言をされてしまった。
俺って…
後攻だそうで、マウンドに立つ森光をセンターから眺める俺。
あれ、可笑しいな俺ライトがいいって言ったんだけど。
どうも先の試合で俺よりうんちが…あ、運動音痴ね、いたらしい。
それでとりあえず今回はライトに放り込んだそうで、俺がセンター…
え?俺にそいつをカバーさせるのかい?
そりゃちょっと酷くありませんか五木ちゃん(キャッチャー)よ。
森光が恐いから文句言いませんけど。
もうね、最初っからしゃがんじゃうよ俺。
外野の奴らから野次飛んでくるけど気にしない、暑いしだるい。
「杉田先輩!やる気だしなよぉ!!」
「まりあ…それは無理な相談だ、だって暑いもん」
「森光先輩見習いなよねー!森光先輩超カッコイイ!!」
「ひな、あいつは全面的にイケメンなの、平凡の俺とは作り違うの!!」
「一試合目は丹下先輩活躍してたよぉ?先輩も頑張ってよぉ!」
「みっちゃん…良い子だからバスケの試合観に行きなさい…」
「行くよぉー後でぇ!」
「あ、そう…」
かしましガールズにまで野次られるとは思わなかったが。
ちょっとはやる気出さないとかな…
やれやれ、と立ち上がるとグローブの感触を確かめながらもう一度森光の背中を見た。
野球なんてやってないのに綺麗なフォームで構えて、ボールを放つ。
別に速い球でもないし変化球が投げれるわけでもない。
普通に高校男子の体育レベルの球威である。
それでも見本のようなフォームのせいか、女子たちがうっとりするように森光を見ていて。
アウトを取るたびに黄色い声が上がる。
わからんでもない、その気持ち。
守備では打たれるし点が入りそうにもなるしむしろ失点するし。
俺もライトのうんちフォローしながら走りまくってボール取ってるし、こけるし。
攻撃に回れば打つし三振くらうし危うくデッドボール食らいそうになるし。
誰かがミスれば森光がさり気なく声をかけて励まして、周りもそれに乗っかってテンションは不思議と下がらない。
圧倒的に強いわけじゃないしむしろ弱いかもしれないのに。
それは俺たちも対戦相手も同じで、本当に高校男子の体育レベルなわけで。
それでも、森光は珍しくちょっと本気でやってるし周りも楽しげだし相手も必至だし楽しそうだし。
「…楽しんでなんぼ、ねぇ」
汗だくになってる森光とかジャージ土まみれの俺とか。
さっきホームベースに派手にスライディングしたくそ汚ねぇ五木とか。
普段なら階段に座って女子のスカートの中身を気にしてる俺たちが。
球技大会でここまでやる気になってるとか、ね。
「森光の言葉、皆に響いちゃった感じでね?」
俺の呟きを聞いてたのかキャッチャーミットをはめながら五木が軽いノリで言う。
そういう五木も楽しそうで、何よりです。
「いやぁ、俺あんなに全面的にイケメンな奴他に知らねぇわ」
男から見てもいい男だったんだなぁーとか言いながら行ってしまう五木に本当にな、と心の中で同意。
体操服の裾引っ張って汗拭うからお腹見えちゃってる森光を眺めながら俺も守備位置に歩く。
不意に森光と目が合って。
ニッと笑う顔が爽やかで、ものっそいイケメンに見えた。
一瞬ドキッとしたけど負けじと満面の笑みを向けてやる。
すると森光は驚いた顔して、それから今度はめっちゃ優しく笑う、ちょっと照れたみたいに。
その顔こそ心臓がギュッと鷲掴まれたようになって思わずセンターまで走った。
反則ですよその顔、イケメンなんだから自重してください。
ただでさえ試合で疲れてて暑さでジリジリしてるのに。
「あー…熱い」
しゃがみこんで顔を覆ってる俺に森光の怒号が飛んだのは数秒後。
ライトに飛んできたボールをキャッチできず、逆転負けしました。
「真智がちゃんとフォローしないから…何でしゃがみ込んでるかな」
「俺なの!?もうやだ森光の鬼!悪魔!イケメン!!」
「有り難う?」
「森光なんて顔面ホームインすればよかったのに!!!」
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