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「これをくり抜いて、あの劇作家に持っていってあげて欲しいの」
なんと王子様は町民のために自らの片目を差し出すと言うではないか。
「とんでもない!」
これには流石のソウゲツも両翼を広げて猛抗議した。
「とんでもないぞ、幸せの王子様! 君の目をくり抜くなんて、いくら何でも私にはできません!」
動揺を隠せず、思わず声を荒げてしまった。
こんなに気持ちが騒めいたのは、メスに巣を乗っ取られたあの日以来だ。
しかし王子様はその怒号にも微動だにせず、真っ直ぐにこちらを見据えている。
「落ち着いて。大丈夫だよ。お願いソウゲツ。僕はあの青年が一刻もはやく立ち直る姿が見たいんだ。この通りだから......お願い……!」
ああ、どうしてこんなことになってしまったのか……。
ソウゲツは口元を強く引き結び、顔を伏せた。
このままこの子を置いて飛び去ってしまえたらどんなに気が楽だろう。
劇作家だと?
人間の男がどうなろうと知ったことか。
いいからさっさと行ってしまえ。
早く……。
「……君がどうしてもと言うのなら。しかし、これだけは言わせてくれ。今からすることは決して私の本意ではない」
戦慄く胸をどうにか叩いて決心すると、ソウゲツは王子様の目元に唇を寄せた。
チカラ加減など分からないから、ひと思いにガリリと噛みつき、グイッと力を入れて……捩じる。
「あ......っ」
すると少年が上げた僅かな声とともに緋色のルビーが剥がれ落ちた。瞳がなくなってしまった左の目元は、そこだけが黒く落ちくぼんでいる。
もう見ていられない……!
少年が痛がらなかったことだけが唯一の救いだった。
手にしたルビーはずっしりと重く、さっきまでこれが王子様の大切な身体の一部だったということを否が応にも実感させた。
ソウゲツはやりきれない気持ちを抱えたまま少年を置いて寒々しい夜の街へとひとり飛び立っていった。
・・・・・
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