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「ありがとうございました」
本日のレッスンを終え、由良は教室から出ると、そこには瀧澤が立っていた。
一瞬、驚きに目を見開いたが、「無」になる事を思い出し、由良は心を落ち着かせる。
「お疲れ」
話しかけてくる瀧澤と極力視線を合わせる事をせず、由良は歩を前へと進めた。
「由良、俺ん家に来いよ」
無遠慮に間合いを詰め、右腕を掴まれ、由良は無理やり瀧澤の方へと向かされた。
「っ!ちょっ……」
「車を用意してる。来い」
由良の答えを聞く間も無く、ほんの数歩の場所で停まる黒塗りの高級車まで引き摺るように連れていかれ、そのまま後部座席へと放り込まれる。
「た、瀧澤‼︎」
自分勝手過ぎる仕打ちに由良が流石に我慢できないと、声を荒げたら、瀧澤は冷ややかな目で一瞥したあと、口元だけを弧に描いた。
何の感情も映し出さないある意味『無』を感じた由良は背筋が強張るのを感じた。
瀧澤自身も乗り込むと車は発進し、車内は無言になる。
何を考えているのか分からない瀧澤に由良の不安がどんどん募っていった。
「……僕、家へ帰りたいんだけど」
静寂を打ち消すようにポツリと告げると、瀧澤は窓の外を見たまま無視した。
それを視線だけで見ていた由良は少し諦めたように溜息を吐くと、自分も窓の外へと目をやった。
何か怒らせるような事をしたのだろうか…
瀧澤とは今朝会っただけで、接触はない。
学校でも自分は全ての授業を受けたが、瀧澤は授業をサボったのだ。
怒らせるタイミングもなければキッカケすらもない。
だけど、瀧澤の雰囲気はいつもと明らかに違い、怒りのようなものが感じられた。
「……何か怒ってる?」
心の声が漏れるような小さな声で聞いた時、瀧澤がこちらを見ていた事に気が付いて由良は驚きに目を見開く。
怒りを伴うような目なのに、少し優しくて、いつもの瀧澤を感じたからか、安心感も生まれた。
だが、自分と目と目が合って、瀧澤の瞳がまた厳しいものへと変わって空気が張り詰めた。
「怒ってるって言ったら、そうかもな……」
どうでもいいように静かに答えると、瀧澤は視線をまた窓の外へと向けた。
息の詰まるようなこの時間が嫌で、由良はどうしたものかと、また一つ小さな溜息を漏らした。
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