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距離 20
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イカリさんは用もないのに電話をした事を怒らなかった。
声が聞きたかったのかと聞かれて肯定すると、俺が眠るまで付き合うと少し嬉しそうな声が聞こえた。
意識が薄くなって行く時、おやすみ、と携帯から声が聞こえて、まるで隣で一緒に眠っているみたいだと思うと、夢を見ることも怖くない。
夢の中でイカリさんと会っていた気がする。よく思い出せないけれど、体がどうしようもなく疼いていて、イカリさんに助けを求めた。
自分から助けを求めるなんて、初めての事だった。
それでも不思議とイカリさんになら大丈夫な気がした。
きっと怒らない。きっと、大丈夫。
2度も声を聞くと、次は顔を見たくなって、その日も起きている間はずっと玄関を確認しに行った。
眠ったら、イカリさんが帰ってきても会えないかもしれない。
そう思ったら、昨日は眠れたはずのベットに横になるのも少し怖くて。
布団に入って目を閉じる。少しでも物音が聞こえると玄関を見に行った。
その度に変わり映えしない扉を見て孤独感が増す。
何度も短い睡眠を繰り返していると、ガチャと扉の開く音が聞こえて、ベットから落ちそうになりながらも慌てて玄関へ向かった。
イカリさんだ。イカリさん、帰ってきた。
もう何年も会っていなかったかのような錯覚に鼓動が早まって、目が合うと全身をドクドクと血が巡った。
「ただいま」
その言葉を聞いた瞬間、じわぁ、と内側から熱を感じた。
今初めて、自分の体に体温が宿ったようだった。
イカリさんが居るだけで生きていることを実感できる。
そっか、俺、生きてるんだ。って当たり前のことをイカリさんが教えてくれる。
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