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ドライヤーを止め、まだ濡れた髪のまますぐに脱衣所を出た。
向かうのは僕の部屋の方ではなく玄関。
そして玄関に続く廊下に、予想通り壱椰はいた。
「僕の部屋、そっちじゃないんだけど?」
後ろ姿に声を掛けると、壱椰の肩が大きく揺れた。
「…っごめん、慧都っ」
振り返って僕の姿を見た壱椰はすぐさま、体が痛むのか、ぎこちなくも走り出した。
「なっ…!」
僕はその後を追いかける。
あんなに怠そうにしていたのに、ぎこちないとはいえ走る元気があったとは驚きだ。
玄関まで追いかけ、鍵とチェーンを掛けていたおかげで開けるのに手間取っていて、壱椰がやっと扉を開いた瞬間には追いつき、腕を掴み後ろへと思い切り引いて、その手を離した。
反動で壱椰はバランスを崩し床へと倒れこんだ。
「いた…っ」
僕は振り返り壱椰を見下ろすと同時に、後ろの扉は音を立てて閉まった。
そしてガチャリと後ろ手で鍵を締める。
「僕、痛いこと嫌いだって言ったよね?」
「…っ…だって、俺はお前のこと、恋情的な意味で好きじゃない」
「知ってるよ、そんなこと」
言われなくても、知ってる。
壱椰の目は絶望の色をしていた。
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