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デザートを口に運ぶ俺を、ルートががっつり見ている。
なんとも言えない居心地の悪さに、俺の手が止まる。
「あれ?食べないの?」
机の上にスプーンを置いたのを見て、ルートが顔を覗き込んできた。
俺は、更に深く俯いて、長い息を吐いた。
ルートに見つめられて食べにくいっていうのもあるけど、大好きな甘い物なのに喉を通っていかない。甘い匂いも味もしない。
アルファムに子供がいたということが、こんなにもショックだなんて。
ーーまだ本当の親子かどうかわからないけど…。でも、レニの髪色はアイリスと同じピンクだけど、瞳はアルとそっくりの緑だった。
衝撃が大きくて何も考えられない状態だったけど、今になって悲しくなってきた。
俺は、机の上にポタポタと涙のシミを作り、鼻水をずずっと吸い上げる。
ーー…でも、レニがアルの子供なら受け入れないとな…。俺の気持ち優先で、嫌だとか思っちゃダメだよ。もし男の俺は要らないとなったら、潔く城を出よう。我儘を言って、アルを困らせたりアルに醜い姿見せたくないから…。
そう覚悟を決めたけど、悲しくて涙が止まらない。
ダメだ、このままじゃ声を上げて泣いてしまう、店を出なきゃ…と立ち上がろうとすると、頭の上にぽんと手が置かれた。
「出ようか」
俺は俯いたままだから顔が確認できないけど、ルートの声だ。
ルートは、先程のチャラい感じではなく落ち着いた声でそう言うと、俺の肩を抱いて店を出た。
路地裏の人通りの少ない道に入ると、今度は手を繋いで歩き出す。
俺は、マントの裾で涙を拭きながら、ルートを呼び止めた。
「あのっ、どこに行くの?それにお金は?」
「お金は払ったから大丈夫。今から俺の一押しの場所に連れて行ってやるよ。君の憂う顔も泣き顔もとても可愛いけど、やっぱり笑顔を見てみたいからさ」
ルートは、振り返ってにこりと笑うと、力強く俺の手を引いてどんどんと先を進んで行く。
歩くうちに涙が止まった俺は、『こんな道があったのか』とか、『このお店アルと来たい』とか思いながら忙しく辺りを見回した。
三十分以上は歩いただろうか。
登り坂や階段を登ってきたせいで、俺の息が苦しい。
ルートが「着いたよ」と足を止めた時には、俺の息が上がって足ががくがくと震えていた。
「ははっ!そんなに疲れた?君、華奢だもんね。背負ってあげればよかったかな?」
「だっ、大丈夫…っ。最近運動不足だったからっ、ちょっと疲れただけ…」
「そう?ほら、見てごらん」
ルートに肩を抱き寄せられて、目の前に広がる景色を見る。
俺は、ルートの手を肩から外すと、前にある胸までの高さの塀に手を乗せた。
「ここ…城の裏側?」
「そう。いつもは見上げてる城を、ここからは見下ろすことが出来る。すごいだろ?この国の城って綺麗だよな。他の国の城を見たことないけど、俺は自分の国のこの城が好きだ」
エン国の城は、真っ白で美しい。
王都にある建物も、白が多くて美しい。
俺も、この城が、この国が、大好きだ。
アルファムに要らないと言われても、この国から出て行くことなんて出来ない。
せっかく泣き止んでいたのに、俺は、今度は声を上げて泣き出した。
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