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医師の許可をもらってから、城の中や城壁の内側を、アルファムやリオに付き添ってもらいながら歩いた。
だけど数日後には、酷い目眩を起こしてしまい寝込んでしまった。
やっぱりアルファムが言ってた通り、男の妊娠中は大変だと実感する。
毎日ベッドの上で休んでる間、色々と考えた。早く元気になって街に出て、ルートの店に行ってパンを買いたい。
でも、安全な城の中にいてでさえ襲われたのだから、外になんてとても出してもらえない。
どの道今は動けないし、もうアルファムや皆に心配かけたくないから、我慢するけど。
それに、あれからひと月は経つのに、まだ真犯人がわからないらしい。
ーーいや…、本当はわかってるんじゃないかな…。頻繁にシアンが部屋に来て、隣の俺の部屋でアルとこそこそ話してるし。アルに聞いても『慎重に調べている所だ』と言って教えてくれないし。ライラの時は、すぐに教えてくれたのに。俺に何か隠してる?
アルファムが仕事をしている間、ソファーで本を読んだりベッドで寝転んでいると、つい考え込んでしまう。
そんな時、お腹がキューっと硬くなって、赤ちゃんがぽこぽこと激しく動くんだ。
俺の勝手な思い込みだけど、まるで赤ちゃんが「大丈夫だよ」と言ってくれてるように感じて嬉しくなる。
今も、少し目眩がするからベッドで横になっていたら、ぽこんと元気よく蹴られた。
「ふふっ、元気だなあ」
「どうした?」
俺の声に、アルファムが手を止めてこちらを見る。
俺がアルファムに向かって両手を差し出すと、アルファムが笑って立ち上がり、俺の所へ来て軽く抱きしめた。
「カナは甘えん坊だな。どうした?辛いのか?」
「少しだけアルに触れたくなった。…ん、周りの景色がぐるぐるする…」
「吐きそうか?」
「大丈夫…」
「吐きそうになったらすぐに俺を呼べよ?」
「うん、ありがとう。今ね、赤ちゃんが元気に俺のお腹蹴ってんの。アル触ってみて」
「どれ」
上半身を起こしたアルファムの手を取って、シャツの下から俺のお腹に当てる。
しばらく静かだったけど、俺が「お父さんだよ」と話しかけると、いきなりぼこん!と力強く動いた。
アルファムの手が、ピクリと揺れる。
「なんと…。元気な子だ。それに不思議な感じがする…」
「ふふっ、でしょ?俺なんてもっと不思議に思ってるよ。俺の意思じゃなくお腹の中が動くんだから。でも、すごく愛おしい」
「そうだな。それにずいぶんと元気な子のようだ。おまえに似た可愛い子だといいがな」
「はあ?何言ってんの?似るなら、当然めちゃくちゃかっこいいアルに決まってるじゃん!俺なんて平凡なんだから!」
「こら」
アルファムが、お腹から手を離してその手で俺の頬を摘む。
全然痛くはないけど、俺は「痛い」と言ってアルファムを見上げる。
「俺に似たら可愛くないではないか。カナに似た方が、可愛くて良い子になる。それに、いつになったら、おまえは自分が美しいと自覚するのだ?自覚して気をつけてもらわないと困る」
「美しいって…。アルの目にだけそんな風に見えてるんだよ、きっと」
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