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シアンは、使用人から大きなタライに入った泉の水を受け取ると、テーブルの上に置いてタオルを濡らした。
「アルファム様。俺は薬を取って来ます。とりあえずはこれをカナデの赤い箇所に宛がって下さい」
「わかった。頼むぞシアン」
「今すぐに」
タオルをアルファムに手渡すと、シアンは急いで部屋を出た。
「カナ、辛ければ寝てていいぞ?」
「いい…。アル、そっと当ててね」
「ああ」
冷やりとしたタオルが、俺の熱い肌に当てられる。ヒリヒリと痛いけど、冷たい感触が心地よい。
アルファムは、タオルが温くなるとすぐに泉の水で濡らして、背中、腕と順番に当てていく。
「ん…、少し痛みが和らいだ気がする」
「そうか?赤味はまだ引かぬ」
「万能な泉の水ですぐに治らないなんて、強い呪詛なんだね…」
「呪詛も様々なものがある。その中で、これはかなり強力なものだ。もしかすると恐らく…」
「なに?」
「…いや、ホルガーの帰りを待とう。カナ、おまえは目が覚める前にうなされていたが、その時に呪詛がかけられていたのかもしれん」
「あ!もしかしてあの夢…っ」
「夢?」
「うん、アルに起こされる直前、変な夢を見た。俺は真っ白な空間にいて、そこに女の人が現れて…。掌に持った炎で、俺の周りに火をつけたんだ。それが熱くて怖くて、もう駄目だ!と思った所で、目が覚めた」
「その女はどんな奴だった?」
「うん…、朱色の髪をして、とても綺麗な顔だった。あれは、たぶん…」
「そいつはベアトリクスだ」
やっぱり。俺に呪詛をかけたという時点で、確信していた。
ベアトリクスさんは、そんなにも俺を殺したいのか。こうなった以上、もう助けてあげて欲しいという俺の願いは、聞き入れてもらえない。
だってアルファムが、すごく怒っている。
とにかく、俺だけの被害で、お腹の子に何も無くて良かった。
俺は、ぷっくりと膨らんだお腹に手を当ててそっと撫でる。
「ちびアル、大丈夫だよ。俺やアルが絶対に守るから、元気に大きくなってね」
俺の頭上から、ふ…と息が漏れる。
顔を上げると、アルファムが笑っていた。
やっとアルファムの笑った顔を見られて、俺はホッとして嬉しくなる。
「なんだそれは」
タオルを持っていない方の手で、アルファムが俺の頬を撫でお腹を撫でた。
「とりあえずのこの子の名前だよ。きっとアルのちっちゃい版だから、ちびアル」
「俺に似てるのか?俺は、カナにそっくりだと思うのだがな。だから、ちびカナだ」
「えー?絶対にアル似だよ。アルの遺伝子強そうだもん」
「い…でんし?なんだ?」
「あ…、うん。この子は、言わばアルと俺の似たところが集まってるわけだろ?でも、優秀なアルの部分の方が、いっぱいあるってこと」
「ふむ…。中味は俺に似ても構わぬが、見目はカナがいい」
「アルも頑固だね…。知ってたけども。俺はどちらでもいいや。元気に生まれてくれさせすれば!」
「そうだな。元気に出てきてくれ。カナも頑張ってくれよ。俺は何もしてやれなくてすまぬ」
「アルは傍にいてくれるだけでいいんだって!その時は、出来れば傍で手を握ってて欲しいな」
「もちろんだとも」
お腹に触れていたアルファムの手が、するりと動いて俺の胸を掠める。
「あ…」と堪らず甘い声を出した俺に笑って、唇にキスをした。
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