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「ローラント、入ってもいい?」
ローラントがいる部屋の前で、扉を叩いて声をかける。
中から返事が無かったけど、アルファムが「俺が許す。入れ」と扉を開けた。
ローラントは、先程のアルファムのように、窓際に立って外を見ていた。
窓に映る顔が、とても辛そうだ。
アルファムが俺に頷くのを見て、俺は部屋の中に入りローラントに近づいた。
「ローラント…、俺の話聞いてくれる?」
「カナデ…」
俺は、ローラントの腕に触れた。
ローラントが、ゆっくりと俺に顔を向ける。
「俺の両親ね、俺が子供の頃に事故…にあって、死んだんだ…。俺が駆けつけた時には、二人とも冷たくなってた。どんなに呼び掛けても答えてくれなくて。その日の朝に、最後に交わした言葉は「お父さんもお母さんも嫌い!」だった。俺も一緒に出かけたかったのに、二人で出かけることが許せなくて…怒ってたんだ。俺がその言葉を言った時の二人の顔が、悲しそうだったのを覚えてる。…俺は、あの日からずっと後悔してる。怒っていても、嫌いなんて言っちゃいけなかった。ちゃんと、大好きだよって言えばよかった。今でも俺は、二人に謝り続けてるよ…」
あの時のとても悲しかった気持ちが蘇ってきて、俺は目を瞬かせる。
「だから、ローラントには、後悔しないで欲しい。ちゃんとお別れをした方がいいと思う…。大好きだよって伝えてあげて欲しい…」
ローラントが、手を伸ばして俺の頬に触れた。
アルファムよりは小さいけど、俺よりも大きなその手の上に手を重ねて、ローラントを見上げる。
ローラントは、泣きそうな顔で笑っていた。
「…僕、行ってもいいのかな?だって、母様が今苦しんでいるのは、母様自身のせいで…。同情すら出来なくて…」
「いろいろと複雑に思うところもあるだろうけど…。ローラントはどうしたい?自分の気持ちに正直になっていいんだよ?」
「僕…僕は…。母様に、会いに…行きたい…っ」
「うん。なら今すぐに行って。アルから許可も出てるんだろ?」
「でも…」
「いいからっ。俺も許す!襲われた張本人の俺がいいって言ってるんだから、ゴチャゴチャ言わずに早く行って!」
「…わかった。母様に伝えたら、すぐに戻って来るからっ」
「急いで戻って来なくていいよ。あっ、でも行くのは急いでだよ!気をつけてねっ」
「うん。カナデ、ありがとう。兄上も、ありがとう…」
ローラントが俺を抱きしめて離すと、扉へと急ぎ、扉の傍にいたアルファムの前で立ち止まる。
アルファムは、「早く行け」と言いながら、ローラントの背中を押した。
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