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俺も頷くと、ゆっくりと呼吸を繰り返す。
いつの間にかリオは、医師の隣に行って手伝いをしている。
俺が襲われたことで、俺の妊娠が周りに知れ渡ってしまったかもしれないと心配したこともあったけど、即座にアルファムが箝口令をしいた為、いまだに極限られた者しか知らない。
なので、出産する時も、医師一人とリオ(この日のために多少勉強したらしい)とアルファムの三人しか部屋に入れないことになっている。
ホルガーとシアンは、アルファムの代わりに執務をこなしている筈だ。
俺が規則正しい呼吸を繰り返していると、俺とは違う呼吸音が聞こえてきた。
隣でアルファムが、真剣な顔で俺と同じような呼吸をしている。
アルファムは、本当に王様らしい王様で、怖いものなど何も無いと思っていた。
緊張することも無いと思っていた。
そのアルファムが、さっきから挙動不審になったり今も手汗をかいていたりしている。
もしかして、とても不安に思っているのかもしれない。
そう思うと、俺が安心させてあげなきゃ!という気持ちが湧いてきた。
「アル、俺頑張る!こうやって手を握ってくれて、声をかけてくれたら頑張れる!だから…、無事に産み終わったら褒めてくれる?」
「もちろんだとも。俺には到底出来ないことを、おまえはやろうとしてくれている。おまえは、本当に強いな。俺は、おまえには永遠に敵わない…。カナ、愛してるぞ」
「うん、俺も…あっ!」
「どっ、どうしたっ?」
急に下腹部が圧迫されて苦しくなってきた。
俺は身体を横に向けて丸めると、小さく唸る。
「いよいよですよ。カナデ様、私が合図をしたら思いっきりいきんで下さい。アルファム様はカナデ様に声をかけてあげて下さい」
「う、うんっ…」
「承知した」
俺の背中に大きな枕が差し込まれる。
右手でアルファムの手を握りしめ、左手はベッドに取り付けられた手すりのような物を掴む。
医師が俺の両膝を広げると、「今です!」と大きな声で言った。
俺は固く目を瞑って唇を噛み、お腹に力を入れる。
「目は閉じないで!子供が出てくる先を見なさい!」
医師の鋭い声が飛んできて、俺は慌てて目を開ける。
ーーなにこれっ!腰が砕けそうに痛い!息も苦しいっ…。頭がくらくらして意識が飛びそう…っ!
あまりの痛さに不安が胸の内をよぎって、呼吸が乱れてしまう。
「カナデ様!呼吸を整えてっ。弱気になっては駄目です!子供も頑張ってますよ!」
医師に言われて、俺は何とか乱れた呼吸を整えた。
ーーそうだっ、俺が苦しいってことは、ちびアルも苦しいんだ…っ。ごめんね、一瞬でも不安になってしまって。大丈夫だよ、無事に産むから。俺とアルとちびアルの三人で、中庭を散歩しようね。
医師の次の合図と共に、俺は力いっぱいにいきんだ。
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